「合併するって契約した。」

と、社長が言った。

「え?」

純は何のことやらわからない。

そこへ多恵子がやってきた。

「社長、ご決断ありがとうございました。」

「どういうことですか?」

合併後の新会社の社長は大先にすると
多恵子が言ったらしい。

「大先社長は筆頭株主でもあるし
先代の理念やロマンを残したければ
カイザーと資本提携した後に
リストラや外部化を最小限にすればいい。
ジョンもなっとくしている」という。

純はなぜか今日の多恵子がやさしいのが
気になった。
そこへ総支配人の中津留がやってきて、ジョンを
空港まで送るという。

社長はジョンと握手をして今後のことを
約束した。

心配する純に社長は言った。

「役員会も銀行もなにもかも納得してくれたので
大丈夫だ」という。
大先は先代の作ってくれたホテルを守ることが
できてほっとした。

と言うが純はなにかいやな感じがした。

ロビーにはリニューアルオープンの
お知らせが貼られた。

それをみていると典子が声をかけた。
「工事をするって、ここ?」
「はい、またリニューアルされたら来てください」

しかし、典子は浮かぬ顔だった。

多恵子がやってきた、
「あなた、大演説をしたそうね。
給料30%カットで役員は無報酬。
上が頑張ればみんな着いてくるって

食事にたかるハエがぶんぶんとえらそうに
いってるって感じだわね。

そんなこと本気に信じてるようでは
永遠に社長になんかなれないわよ。

あ、という間に変わるわよ
このホテル。」

そういって、去っていった。

典子の寂しそうな影が残った。

それからカイザー側のスタッフが
どんどんとホテルにやってきて
改築を行った。

ロビーにあった花は取り払われ
ソファも最低数となり
照明も暗くなった。

各部署は英語で表記され
英語ができない従業員は配置転換か
リストラの対象となった。

年功序列はなくなり、実力主義。
米田の変わりに桐野が部長になり
露木の変わりに池内が部長になった。

ついに早期退職者募集となった。
リストラ対象となったふたりの
元部長はさんざん多恵子にやめるように
勧告され、窮地に追い込まれる。

千香は自分は英語が苦手だから
リストラされるとなげくが
若い者は給料が安いから
大丈夫だと純は言う。しかし
英語、がんばうぜ。

水野は不動の地位ではあるが
ヘッドハンティングをされている
という。
純のことも話したらあいてのホテルは
やる気のある若者は大歓迎と
いったという。
一緒にやめないか?と、水野は言うが。

それをきいた愛は驚く。
「やめるわけないでしょ。」

純は、「聞いていたことと
実際と全然違うのでこれはどうなんだろう
?結局向こうの言いなりになっているし。

ね?何か言ってよ」

腹筋運動をしている愛に言うと

「英語で言って」(英語)
と愛は英語で言った。
「だって、英語で話したら英語の勉強になる
といったのは純さんです。」(英語)

と、英語で言った。

「で、社長はどうしてるの?」(英語)

「ひーいず。。雲隠れ・・雲隠れってどういうの?」

「え?雲隠れ?」(英語)

そこへ来客があった。

でるとなんと雲隠れの社長だった。

「わ!!」

「いや~~さがしたよ、わかりにくいね~」

「は???」

社長はなんと、一緒に夕飯をたべて、「うまいね
愛君は。いいだんなさんもらったね、幸せそうで
よかったよかった。ご馳走様。」

何をのんきなことを言ってるのかと
純はいう。

「あの~社長!どうなっているのですか?」

社長は家の中に張っている写真を見て
「これが魔法の国?社長かわいいね
面白そうなものがいっぱいあるね~~」

と、話をはぐらかす。

純は「何言っているのですか?社長!」

というが、らちがあかない。
「それならこっちは
最終兵器を使います。

悪いけど愛君、お願いします。」

「わかりました・・・」

純は愛を社長の前に連れて行った。

「なに??なに?」

「ああ~~もう僕どうしたら良いのかわからないよ。
だって話が違うんだもん、リストラとか組織編制とか
みんな向こうがかってにやってしまうしさ
カイザーにいくら抗議してもすべて
CEOの指示ですというしジョンには電話が通じないし
大先の部下はみんな戦えとかいうし
争いごと嫌いだって言ったろ
かみさんだって、全然分かれてくれないから結局莫大な
慰謝料を取られて、マンションまで取られるしさ~」

「なんでそんなことわかるの?」

「実は愛君は人の本性がわかるのです。」

「すごいじゃん、だったらカイザーの本性を見て
何を考えているかみてくれないかな?」

「社長!人に頼ってばかりでどうするんですか?
リニューアルオープンはすぐですよ。」

「だからそのときはジョンも来るからそのときガツンと
言うよ。ガツンと。」

「そうですか、ガツンと。」

さてその日が来た。

多くの列席者や報道陣のなか
リニューアルオープンのリボンがきって
落とされた。

しかし、そのホテル名が

なんと

「カイザーオオサキプラザホテル」
だったのである。

「オオサキカイザーではないの??」
純は驚く。

多恵子はご満悦の表情をした。

おじい、いったいどうなるの?
このホテルは???

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のっとられたのですよ!
その気弱なボンボン社長がどじだったために
丸め込まれたのですよ。

合併の時には「社長は大先」という
えさに釣られて合意したから
こうなるのであって。

多恵子だったらどうにでもうまく
まるめこむことができるってもの
です。

トップがだらしないと、組織は壊れます。
今の日本もそうです。
決められない大先と決められない政治が
かぶさっているように思えます。

もし、愛君が役員会議にいたら
カイザーの本性をみぬいたでしょうが、
遅いです。

純も若いのでそこまでの経験が
ありません。

さて、のっとられたオオサキにこれから
どんなことがまっているのでしょうか。

多恵子ママは本当にやり手です。

真正面から攻略できなければどんな
手を使っても目的を成し遂げます。

それが分かったら、よけい家にいられない
愛の気持ちが分かりますよね。