総支配人からみんなの総意に
賛成できないなら、この企画から
降りてくれといわれた純。

「ちょっと待ってください総支配人。
そうおもいませんか?」といったが

この会議室から出て行けといわんばかりに
米田はドアを開けた。

おじい、やっぱむりだよ、このホテル・・・。
純は、絶望してドアにむかった。

「申し訳ありませんが、私もこの企画から
おろさせて頂きます。」

と声がした。
桐野だった。

「もし私が結婚式をするなら、このような結婚式には
でたくないからです。

と申しましても実際、私が結婚できるかどうかは
別の話ですが。」

そういってドアのほうへ向かった。

露木は池内に、「君が新郎新婦様に連絡を」といった。

すると池内は、「私も降ります。私は彼らを説得する
自信はありません。ブライダルの人間として待田の
いっていることに反論できません。
しかも桐野は今残っているたったひとりの同期で私も
独身なので・・。」

「すみません」、と今度は千香がたちあがった。

「私も降ります。私も独身でしかも待田さんと同期なので。
あ、私なんかいなくても困らないと思いますが・・」

純はそんなことはないと首を振った。

すると総支配人は
「もういい、新井君
キミが進めなさい。」

というと

新井民子は・・・あの・・と

言いよどんだので

米田は「もしかしてキミも独身?」

と聞くと

「ばつ一です。
私も取材抜きで結婚式をしたほうが、オオサキの
宣伝になるような気がしてきました。」

総支配人は、コホンと咳払いをして
部屋から出て行った。

桐野は、純に声をかけて会議室の机に戻った。
純もさきほどの位置に座って
会議を進めた。

おじい、やっぱ私このホテル・・好きかも。

会議が終わり、ロビーに出た純。
うれしくて、舞い上がっていると

桐野がだめだしをした。
「なに感傷にひたっているのよ。
やることが多いのよ。
後二日よ。」

純は各部に根回しをしていった。

米田は「社長、大丈夫か?
人員はそれほど出せないからな。」

「大丈夫です。
わたしに、ついてきてください」

そういってぽんと胸をたたいた。

しかし、予算のない中大変な
仕事となった。

ぐったりして帰った純。

「怖いのは桐野さんの駄目出しよ~~
おかげで仕事中はずっと
なにかわすれてないかと、気になって。。。」

愛がふむふむとお茶を飲んでいると

純はいきなり、「ああああ」
と叫ぶので、驚く愛。

「どうしよう、牧師様と
あれなんだっけ・・・弦楽なんとかっていう
音楽・・・・・」

「・・・大丈夫ですよ。
その二つは。」

「え??」

翌日の会議で、牧師様のことがあがった。
純は予算の関係で本物の牧師様はよべないけど
水野にお願いしたいといった。

「あの、水野さん、シビルウエディングミニスターの
資格を持っていますよね。」

「え??」

愛が調べて教えてくれた。
「なにそれ?」
と米田が聞くと

「宗教に関係なく式を取り仕切ることが出来る
資格のことです。」
と池内が言った。

「いいじゃないですか、それ。
水野さんだったらかっこいいし。」

と千香が賛成。

「水野さん、お願いできませんか?」

と純がいうと

「いや~でも~~」

と水野が言うので

「水野君おねがいします」

と新井、桐野、池内が同時にいった。

「はい、わかりました。」(あっさり)

「音楽はどうなっているの?」

と桐野が聞く。

「大丈夫です。アマチュアですが、バイオリンと
チェロとピアノができるメンバーを確保しました。」

そういって、
純は

「あああああ!!!」

と、声を上げた。

露木は驚いてくしゃみをした。

「なんなんだ??」米田がいうと・・

「コーラス・・・・歌があったほうが良いですよね」

「だったら、」

と新井が5年前までオオサキにはコーラス部があって
そのメンバーが残っていますという。

そのメンバーとは
新井と桐野と池内だった。

それでコーラスも決まった。

純がロビーに行って
手順を再確認していると
社長がいた。

「いよいよ明日だねロビーウエディング。
水臭いな、俺に言ってくれたら
即、許可したのに。」

「そう思ったのですが甘えてはいけないなと
思いまして。
そういっちゃなんですが、ひとつお願いが
あります。」

「なに?」

「新郎新婦様にはご両親が参加されないので
バージンロードを新婦様とあるいて
いただけないでしょうか?」

「いいよ、喜んで。
蚊帳の外で寂しかったんだ。」

「もしかして、難航しているのですか?
合併の話。」

「いまね、なんでも経営効率を考えて
経営が難しくなったらリストラしたら良いなんて
考え方がどうもね。ホテルの存在ってそこにきた
人に特別な時間と空間を提供するものだと思うし
それに俺は、経営より泊まるほうがすきだな。」

「いいこと言う割には
尻すぼみですね・・・。
私たち同じ社長なんだし、頑張りましょうよ。」

「そうだね、社長と一緒だと元気が出るよ。」

といって、笑った。

すると、それまで座っていた社長が
いきなりすっと立ち上がったので
後ろを見ると桐野がいた。

純は邪魔だと思って、去っていこうとしたら

桐野が「待ちなさい」
といった。

「あなたに用があるのよ。

明日ホテル各所にだす掲示物だけど
これは違うわよ。」

「本日ロビーにて結婚式を行います。
ご迷惑をおかけしますが、ご容赦ください」

「え?」

「これだと、何か悪いことをしているみたいでしょ。
”ご迷惑”ではなく、”皆様も是非祝福の場にご参加下さい。”
にするべきじゃないの?
ほかのお客様に幸せな気持ちになってもらいたいならね。」

「わかりました、すぐ変えてきます。」

といっていこうとすると

「走らない」、とまた桐野の駄目だし。

おじい、桐野さんの駄目だしは最後まで
厳しかったよ。

いよいよ結婚式の当日
となった。

純は撮影所で、「ここで、撮影をして
もういちどロビーで撮影をしますといって
誘導します。

それから、ウエディングです~~」
と、最後の打ち合わせをした。

すると

そこへ

千香が入ってきて

「大変です。新郎新婦様が
結婚式はいやだとおっしゃっています。」

純はなにが起こったのかわからなかった。

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何が起こったのかな?

サプライズなので結婚式のことはお二人は知らないはず
なのですが。

いよいよ、純の企画が実現します。
大変ですよね。結婚式って。
これをみていて、学生時代の文化祭を思い出しました。

うちあわせに、各所責任分担に・・・
出演者への交渉に、上のひとの了解をとるとか・・

みんなの力が一丸となると不可能はない。

そのことばが実現するのももう少しです。