「さぁ、どうやって責任を取るつもりだ?」
部長のことばに、純はもっていた辞表をだ
そうとした。
「そういう常識はあるようだね。」
同僚も先輩もじっとみていた。
だれも止める人はいない。
と、
そこへ、社長がやってきた。ゴルフのいでたちだった。
なにわ製薬の社長とハーフを回ったんだけどね・・
と、最後でまけたくやしさを話す・・・(のんきだね)
そして、昨夜の騒動も話題となりあちらの社長は
今後もプラザホテルを使いたいといったという。
あの粕谷は自分の立場を利用してあちこちで
マージンを取っていたことがわかって首になった
のであった。
「だから・・・・・・」と社長は純が持っていた辞表を取り上げ
「これはいらないね」といってびりびりと破いた。
そして「じゃ、これからもがんばって社長」といって出て行った。
「ありがとうございます」純はうれしくなった。
本当はあの人は大物かも???
と、あとを追いかけお礼を言うつもりだったが
相変わらず若い恋人といっしょなもので
ん、なわけないか、と思う純だった。
しかし、現状は厳しく誰もが純をうっとうしく
思っているらしくベル仲間も純に仕事を押し付け
一人でてんてこまいをさせるし・・
掃除のスタッフにも「わかりました・・・社長」と
いって、小ばかにされるし・・・
お昼を食べにいって千香の横に座ると
そわそわしている千香は、忙しいからと
立っていってしまうし
まわりの連中も心なしか冷たい視線で見ているし
純は思った。
あったなぁ~~~高校の時こんな感じ。
と思いだした。
ハンドボール部でメンバーが足りないからと
困っていたのでキーパーで出てあげたら
大負けしてしまって、それでも悔しそうでないので
なぜというと、すっとみんな去って行った。
クラスの女子に手を出した兄貴のおかげで
純が裏から手を引いているのかと女子全員
から疑われるし。
小学生の時ドカ食いした弟が学校で
うんこをもらして
学校中からうんこ兄弟と笑われるし。
純の自宅で
夕食を食べるかつてのうんこ兄弟(汚いな・・)
なんだかおかあちゃんのと違うと弟に
おかずの味付けを指摘された。
「剛、あんたいつまでいるの?」
「大丈夫、大丈夫・・ちゃんと考えているから。」
とのこと。
そのとき純が首になったのではと母から電話が
あった。
こそこそと逃げ出す剛を呼ぶと母に剛が
純の家にいることがばれて、帰るようにせっとく
しなさいと、母に怒られる純。
どうも彼女は貧乏くじを引く運命らしい。
人のために動き、人のためにがんばっても
人が離れていく・・。
ある日ホテルの休憩所にいると、そこへ来た人は
純を敬遠して去っていく。
でも、あの男だけはそっと見ているわけでして。
そう、愛クンです。
あ、こいつのことすっかり忘れてた!
(って、そりゃないですよね。)
「あのさ、この間のことごめんね。」
「いえ、大丈夫です。ホテル止めずにすんだん
ですね。」
愛は笑顔で言った。
「もしかして、私がこうなるの見えてたの?」
「ま、少しぶれていた程度ですが・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「信じる信じないは自由ですから」
そこで、純はロビーで陰に隠れて愛にひとの心を
読んでもらうことにした。
「あの人は?」と宿泊部長。
「いじめられた中学生みたいに
おびえた目をぎらつかせながら
首を360度回して
います。」
「え・・・・・」
「あのこは?千香ちゃん」
「あの子は赤ん坊みたいにギャーギャー
騒ぎながら手当たり次第物を壊して
います。」
「あの背筋ピーンのひとは?」と桐野。
「あのひとは鎧を付けた武士のようです。
ものすごく傷だらけだし。
結構あなたに似ているかも。」
「似てないよ・・・。
でもさ、なんでそうなったの?生まれつき?」
「あ、いや、あるきっかけがあったというか・・・」
そこにコンシェルジェの水野がやってきた。
「あの人は???」
と聞くと水野が近くまで来て
話しかけた。
「昨日は待っていたのに・・」という。
なんだっけ?と忘れていたけど
今日、一緒に食事に行こうといわれたことを
すっかり忘れていたのだった。
すみません・・・と謝って・・
「でこの人は?何か見える?」と
こっそり愛に聞くと
愛は、「この人は・・・・・僕の同級生です。」
水野は忘れていたらしく、
「あ、待田…アイだっけ?」
「いとしです。」
そうそう・・・・ってことで、三人で食事に
行くことになった。
しかし、なぞのある愛は気分が悪そうで
人が多いとそうなるという。
愛がトイレにたったとき
純は愛君はどんなやつでした?と水野に聞いた。
「学校でもあんなふうに下を向いていたよ。
神戸でけっこうな金持ちの家の子。両親は
弁護士をしていて、あと双子の弟がいたけど
病気で亡くなったって。」
純はふと気になった。
トイレでは気分が悪そうな愛が
鏡を見ていた。
その鏡に映っているこが言った。
「なんでお前が生きているんだよ」
という。
「お前が死んだらよかったんだ」ともいう。
その子は愛にそっくりだった。
愛は苦しそうにした。
帰る道、あの牛おいしかったなぁ~
ああステーキね、たくさん食べるね
などと楽しそうにしながら歩く純たち
の後を愛は離れて歩いていた。
愛はそんな無邪気な雰囲気と対照的に
暗い感じ。
「すみません、僕までごちそうになってしまって。」
「何言ってんだよ、久しぶりに会えてうれしかったし。」
「はい・・」
「あ、あの私はここで・・」
「いいよ送っていくよ、方向は一緒だし。」
「じゃ、いとし、またな」
・・・
「じゃ、またね。」
「純さん・・・気を付けて」(その男に・・)
純は手を振って帰って行った。
愛は何かが見えたのか否定するように
頭を振った。
水野とふたりで歩いていく純。
自宅近くまできたので、「あのマンションです。」
と、いうと水野はどの部屋?と
聞いた。
あの一番上の明かりのついている部屋です。
(あぶないなぁ~~んなこと教えて。
純は大丈夫なのか?というより
世間知らずって感じ)
「え?誰かいるの?」
「ええ、あほな弟が居候で・・・」
そうなんだ、と何かを考えている水野だった。
「じゃ、今日はどうもありがとうございました。
おやすみなさい。」
と、純は帰ろうとしたら
水野が純の手をつかんだ。
「君と付き合いたいんだ」
え?
「初めて会った時からそう思っていた。」
え???ええええ???
水野がちかづいてくる・・
キス??
いきなりかよ~~~~
****************
だから、愛クンが「純さん気を付けて」と
いったのです。
水野の正体も知っていたはず。
しかし、純にはその気がないことも
知っていたはず。
どこかで見ているのかも・・・ですよ。
明日が楽しみ。王子様のように現れる
わけですね。
水野はこれだけのイケメンですから
もてると自負しますよね。
それにしても職場のいじめは厳しいです。
だれも純の相手をしてくれないし。
こんな風に小中高と来たのかと思うと純は
強いです。
