16話 愛の調べ ②

この宴はとんでもない宴となりました。
ちょっとイケメンの旦那様でありますが、ジニを見てどこかであったことがあるようなといいます。友人は誰に似ているのだと聞きました。

オムスは厳しい顔をしてにらんでいました。

いや、昔の事だと旦那様は言います。「ジニは面白いお話ですね。ぜひお聞かせください。」といいますと、旦那様は「もう良いと言っておるのだ」と拒否します。「その昔勉学に訪れた風景のうつくしいソンドで、気まぐれにキーセンを抱いた。子供が出来たが、生ませるわけにはいかない。おろせといったが、拒否された。毒草でものましましたか?」「そなたは何ものだ?」「キーセンの名はヒョングム」そういって、ジニは旦那様に水をかけて席を立ったのです。

悲しみと怒りとむなしさにジニは苦しみました。あんな男が父親だったとは。
そこへオムスがやってくるのです。「母の元へいってあの非情な男である父親を迎えなさい」と。追い返しますと、ジニが言うと、母はそのために生きてきたのだといいます。「感情を抑えて、暖かく丁重にむかえよ。決して母を悲しませることはするなそれだけはこの私が許さぬぞ。」と。

母はおめかしをしてうれしそうに待っていました。父親に一度もあわせてやれないのが気になっていたというが自分がその人に会うのが楽しみでたまらなかったようです。

オムスの部屋にスマン長官がやってきました。

「二十年と5ヶ月、好きだったキーセンを守って都一の楽士がソンドに住んだ月日だぞ。」とスマン長官はいいました。

母は旦那様に会ってとても喜んでいました。ジニは部屋を出てオムスのもとに行きました。「オムス様の信じる愛とはなんですか?」
しばらく間をおいていいました。「緩やかな調べだ」。
「早い調べではなく、ゆったりして、物悲しくもあって情緒があって・・・そんな調べだ」
「オムス様」
「先を急ぐ世の中にあってゆったりと流れる愛が一つぐらいあってもよかろう

だがお前はそんな愛しかたをするな。あきらめられる愛なら自分からあきらめなさい。成し遂げられる愛、そういう愛をつかめ。」

母を愛した二人の男性はひとりは、ヤンバンで身勝手な生き方をした男。それでも母は父を愛して待っていたこと。そんな母をゆったりと見守りながら愛していった、もう一人の男。

ジニは、そんな愛をみて、何を思ったのでしょうか。
翌朝、旦那様は、帰って行きます。「近いうちに。また訪れよう。母を頼んだぞ」「「はい」ジニは父親の顔をみないで答えました。それが何を伝えたのか、父はだまって寂しそうに帰って行きました。

さて、こちらは都。策士家同士の話し合いが行われていました。どうしてもキムジョンハンがあきらめられないプヨンは、ピョクケスをそそのかして、ジニを取り返す方法といって相談していました。

キムジョンハンのもとに王様の即位二十年を祝う宴を行うので都にもどれという手紙がつきました。
ペンムのもとには、プヨンがやってきました。

「王様の宴でミョンゴムと鶴の舞いを披露せよとの伝言でした。」

「いまさらあのミョンゴムをなぜ?」

「今こそ真の戦いをしようというお気持ちでしょう」

「それはメヒャンでは泣くお前の気持ちだろう。イエージョパンソさまは鶴のマイを王様に知らせていないから。メヒャンも未完成の舞いを選ぶような無謀なまねはすまい。ならば・・・」

「私がピョクケス様を動かし王様に舞いの存在を教えました。」

「まったくスミにおけぬな」

「そこが私と師(メヒャン)の違う所でございます。」

呆れたペンムとクムチュンでした。

キムジョンハンは、ジニを呼び出しました。
「3日後に都に戻る」
「うかがいました」
「そなたの気持ちをこれで煩わせることもなくなるな」
「イエージョパンソさまのお気持ちはすぐに晴れるでしょう。」

「このまま終わるのか?満足か?」

「はい・・イエージョパンソさま」

夜、コムンゴをひくジニは手を止めて考えました。

キムジョンハンは笛を見ていました。プヨンがやってきました。「笛に合わせるにはカヤグムでいかがですか?」
「なぜそなたがここにいるのだ?」

「あなた様が恋しくてはせ参じましたといったら女のくせに口がすぎるとそしられますか?」
(はいっ、きつねがでました!!!)
「そなたには気持ちのカケラも与えられない。」
「私には下さらないというお心をこの愛で埋めて見せます。」
「おそばにおいてください。いつかきっとそのお心を私に向けることが出来ると信じています。」

そしてキムジョンハンの手をとってチマの紐を解かせようとしますが、キムジョンハンは吾に返って去っていきます。

そんな夜なのに、キムジョンハンは矢の練習をしています。
でもばらばらにあたります。
ムミョンが相手をするといいます。
競い合うというのですが・・・

「はじめから勝負はついていた。」
ムミョンは見事な腕前だったが、「射抜きたかったのは的ではなくあなたでした」というのですね。

キムジョンハンは私も同じだといいます。

「あなたが愛してもない女を抱けぬというのならミョンオルも同じでしょう。
ミョンオルとともに生きる道をさがしませんか?」

キムジョンハンは黙って去っていきます。ため息をつくムミョンでした。

この男・・・何もの???(笑)

キムジョンハンをものにできなかったプヨンはうなだれてピョクケスの元に行きました。

ピョクケスは、プヨンの力を借りることなくジニを自分のものにして思い知らせてやると憎しみを募らせます。それが愛情だとプヨンが教

えたからです。
プヨンはニッと意地悪そうに笑いました。

点呼~~~

この時のキーセンたちの衣装の美しさ。

「健やか」の音楽が素敵です。

キムジョンハンが都に戻るというのでキーセン達が見送りにでたのです。

鶴の舞いの舞譜を作ることだけが残っているのです。

寂しくソンドを去るキムジョンハンでした。ジニは決してキムジョンハンを見ませんでした。

なぜ????

ジニが感情を抑えてことをペンムは喜んだのです。

が・・・

ジニは・・・・?

湖でキムジョンハンはジニを助けた事を思い出しました。

そして漢詩を取り出しました。

役人を先に返したキムジョンハンでした。

ジニは、馬に乗って出かけました。

美しいソンドの秋の風景がありました。

あちこちでキムジョンハンの想い出を思い出しました。

笛が聞こえました。

「忘れ物があったので」といいます。
あやまって持ってきてしまったものがあるのだ
友となればいいのか・・・・

友となればいいのか??

そうすればともに生きられるか?

しかしできない。

友となるくらいならそなたを失うほうを選ぶ。
私ははじめて女人を愛した。そしてもう二度とない。
だからこの心を持っていくことは出来ぬ。
一人の女人を深く愛した。
その心をここにおいていく。

わたしもみてくれ

顔をみせてくれ

最後ぐらい

後姿だけなのか

その姿をこの胸に刻んでほしいのか」

ジニは振り向きました。

キムジョンハンはジニに触れて涙をぬぐいました。

やがてその夜、二人は結ばれます。

でもひとり去っていくキムジョンハンでした。

残されたジニは詩を読みます。

『あなたに会えるのは夢の中だけ
同じ道をたどり、再び会いにきてくれた
願えばいつも 夜 夢の中で
同じ日、同じ時 あの道で
もう一度会える』

ジニの愛はどこへいくのでしょうか?