今日の文章は
おととしの8月に載せたものを再び載せるものです。
なぜそれを再び今載せるかと言いますと、
この文章を今捧げたい人がいるからです。
捧げたい僕の心の想いがあるからです。
「心に根ざして未来を照らす言葉」
アリス高崎
ブログ担当Nです
とても悲しいことが起きました…
とてもショックなことが起きてしまいました…
僕にとっての出来事です…
このブログは障害者就労支援施設、アリス高崎就労支援という施設のブログです。
つまり僕の職場のブログです。
つまり僕の仕事の一部でもあるのです。
でも仕事中にこんな記事を書いている時間は無いから、家に帰ってから寝る前とかに、記事を書いています。
先日、自分としてはとても書きたかったことがあって、就寝前に結構時間をかけて、丹念に1つの文章を仕上げたんです。
こう言ってはなんですが、自分としてはすごくお気に入りの文章で、よく書けたなーって思えた文章だったんです。
その文章をスマホに保存しておいて、
「おやすみなさい、よくがんばったね😊」
と自分にねぎらいの言葉をかけてあげて、僕はその夜、安らかな眠りについたのです。
その翌日のことです
お昼休み、昨夜睡眠時間を削って長時間かけて書いたお気に入りのブログの記事を、アップしようかと思って、スマホをいじっていたんですけれども、
あろうことか…全く以て間違えてしまい…昨夜睡眠時間を削ってまで一生懸命書いたブログの記事を全部消去してしまったのです…
青ざめました…
でももう後の祭りでした…
いろいろ工夫してみたけど…どうにも復元できませんでした…
同じ文章はもう二度と書けません…
悲しくて悲しくて…とてもショックな出来事でした
結構、僕としては書きたかった大切なことだったんだけどなぁ…
お昼休みが終わりかけ、
その時いつも午後からやって来る若いメンバーさんが来ました
お互い挨拶をした後、僕はその若者に言いました
「実は…僕はね、今、大変なショックなことがあったから…ちょっと今日の午後はもう立ち直れないかもしれないよ…
だから、どうか僕を慰めてください…」
唐突にそう言われたメンバーは、とても物静かな若い男性だったので
「はぁ……う〜ん…はぁ〜…」
となんとも言葉に詰まっていました
「今日の〇〇さんの仕事は、『とんでもないミスをしてしまって、ショックで落ち込んでいる僕を慰めること』が大事な仕事ですよ!」
と、僕が一体何にショックを受けたか具体的には伝えず、
「何でもいいから、ただ慰めてください」
という無茶なお願いをしたわけです
「あ…はぁ…」
「どうかじっくり考えてみて!
何か後で、僕を慰められそうな言葉が見つかったら、どうか教えてください!」
と僕は、その寡黙な若者に、やんわりと冗談交じりで、そうお願いしておいてみました。
もちろん笑いの中で冗談で言ってるけど、結構大事なメッセージかも。
午後の作業が終わり、
終礼となり
いつもその時、ちょっとした雑談をみんなでするんですけど
僕はその物静かな若者にちょっと尋ねてみました
「ところでどう?
『がっくりと凹んでいる僕を慰めてくれる言葉』
は、何か見つかった?」
ほんのちょっとの間があって
「…はい…」
と言う返事をいただきました
「おー!」
と皆から歓声が上がりました
「えー! すごい! 見つかったんだ!
あー、じゃぁ是非その『慰めの言葉』をへこんでいる僕に伝えて下さい!」
僕はその物静かな若者から、どんな慰めの言葉をいただけるのか、楽しみに待ちました。
寡黙な若者はみんなの前で、小さな声で囁くように言ってくれました。
マスクをつけているので、その声は余計に聞き取りづらく、本当に耳をすませながら聞かせてもらいました。
かすかな振動音となって、その声は部屋の空気を揺らして、僕らにかすかに伝わってきました。
「…なんとかなりますよ…」
そんな言葉を伝えてくれました
僕はそれはすばらしい言葉だと思いました
みんなも
「おー!」
と言う歓声をあげていました
そして彼は、そのあとに、またまた本当にかすかに聞こえるような小さな声で部屋の空気を振動させ伝えてきてくれました
「…がんばりましょう…」
なんとかなりますよ
がんばりましょう
この言葉はとても僕の胸に響きました。
でも胸に響いたのは僕だけじゃありませんでした。
「なんか今の言葉、すごい私にも響いたよ!」
そんな言葉を言ってくれる人たちもいました。
今のこんな時期、この言葉は誰の胸にも響きますよね…
そりゃそうです…
先のことなんか考えたら、どうなるんだか、誰にもわからないですもんね
だから彼が数時間かけて考えて、僕に伝えてきてくれた言葉は、時間をかけるに充分に値する言葉だったと思います。
「…なんとかなりますよ…」
この言葉はその場にいた多くの人の胸に届いたと思います
意味のあった発言だと思います
誰かの胸に届いた言葉は鏡のように映し出され
必ず時間を経た後、その言葉を発した、その若い寡黙な男性の中で、やがて生きた言葉となって、彼の心の中に時間をかけて根ざしていくと思います
なんとかなるよ、がんばろう、
施設に来ている人たちは、みんな心の病を抱えているから、得体の知れぬ大きな不安を抱えながら、
また、何ともならないような生きづらさを抱えながら
それと共に生きている人たちがたくさんいます
自分の人生に対して、先行きの見えない、大きな不安を抱えながら生きている人たちがたくさんいます。
その若者も、またそのうちの一人です。
自分が自分という人間として生きていくということに対して、大きな不安を抱えながら生きているアリスのメンバーの一人です。
だからこそ、彼が彼自身の言葉として発したその言葉には、とてもとても意味があると思うのです。
誰かから聞かされた言葉ではなく、
僕という他者を慰めてくれるために、
彼が時間をかけて見出してくれた、生きた言葉だと思います。
大きな不安を抱えながら生きる若者が、
自らの口と声を通して、
僕を慰めてくれるために、
この世界に振動させてくれた言葉だと思います。
…なんとかなりますよ…
…がんばりましょう…
この言葉は、鏡のように反射して、彼の中に言葉を超えた感覚で、
これから長い時間をかけて根ざしていくでしょう
それはそれは、とてもとても大切なことだと思います
僕にとっても大切なことだし
その若者の未来にとっても、とてもとても大切なことだと思います