トラウマ治療
きっかけはワークショップだった。そこには「はーちゃん」という中学3年生の子がいるが明らかに何らかの障害がある。体は小学生達と同じくらい小さいし常にイヤイヤ期で何があっても、大人に褒められた時ですらすぐ「やだやだ」ばかり言ってる。1日に何回「やだ」って言ってるだろうってくらい。
その子と自己紹介をし合った時、将来は女優になりたいと言ってた。だから今こうして演劇を習ってるんだ。でも女優になったら嫌なことなんてもっともっとあるよね。
それから中学生の頃の自分が幽霊のように見えるようになった。
当時は学校でも男さんほぼ全員にブス認定されてて家族とも仲が悪くて学校にも家庭にも居場所が無かった。自分より重度の自閉症の弟は学校で気に入らないことがあるとすぐキレて暴れる問題児で確かその頃は学校を休んで障害児向けの塾にだけ行ってた。自分はどんなに傷ついて休みたいって行っても親に不登校なんか許されず無理矢理学校に毎日行かされたのに。自分だって当時は気づかれなかったけど明らかに勉強にも追い付けず運動神経もゴミカスで皆と同じことができない自閉症なのに。親が甘い奴は学校も塾も行ってないのに。家の親にとっちゃ義務教育をサボるのは殺人以上に罪が重い悪事なんだってさ。
そんなポンコツの不良品に生まれた自分を母親は憎んでて毎日のように「お前なんかいらん」「死ね」と怒鳴られたり殴られて、顔合わせるのも嫌だから部屋に閉じ籠っても部屋まで因縁つけに来たり鞄の中も勝手に漁られてノートの使い方にまで文句言われた挙げ句破られたりもした。
当然父親も自閉症なんかに生まれた失敗作の自分を嫌ってた。
中1のある日母親に「週3日、近所の塾に行け」と命令された。ただでさえ勉強が大嫌いだから当然「嫌だ」と言ったんだけど嫌いなガキの言うことなんか聞くわけ無いから無理矢理連れて行かれた。学校で教師が「やる気が無いのに塾なんか行っても無駄」って言ってたからそのまま母親に伝えても「それでも行かねーよりマシだ」って日本語なんかまるで通じない。
その塾は確か月曜日に国語と金曜日に英語をハゲ塾長が教え、水曜日は数学をハゲ塾長の妻が教えてた。塾生は15人くらいで同じ学校の奴も多数、優等生から落ちこぼれまでいた。
塾の時間は全部嫌いだったけど特に毎週英語で教科書を1ページ丸ごと暗記させられるのが苦痛だった。自分の知能では短期記憶ができないから何10回読んでも書いても覚えられなくて毎回居残り勉強をさせられた。
他の塾生はやめたくなったら辞めてたのに自分の親はそれを許さず結局高校受験が終わるまで毎週できない暗記と居残りをさせられながら通わされた。親は自分の要求なんて何一つ聞かない人だったから毎日「こんな家族いらない、早く家を出たい」って思ってた。
同じ中3でありながらはーちゃんは自分の将来の夢のために好きな習い事に通って嫌なことを何でも嫌だと言える。中3の自分は障害あるのに嫌な塾にも学校にも我慢して惨めにみっともなく通っててあまりに境遇が違う。ついでにはーちゃんは一人っ子なのに対し自分はきょうだい児。
かといってはーちゃんに妬みはあっても憎むことはできなかった。ワークショップで「二人組作って」ってなった時に真っ先に「組もう」と来てくれたのもはーちゃんだし「大きくなったら市ちゃんみたいにオシャレして可愛い鞄を持ちたい」と言ってくれて、いつも側にいてくれたりと妹のように自分になついてくれてるから。さすがにそれをはねのける程非情にはなれない。
だから見えるようになった中3の自分をどうすることもできなくて苦しかった。
怒りの矛先を向けるのは塾にも学校にも行かせ自分の人格を否定した親が妥当。だから母親に当時塾に無理矢理行かせた怒りをぶつけた。なのに母親が言ったのは
「あんた塾なんて行ってたっけ?」
いじめっ子と同じように自分のしたことをすっかり忘れていた。あまりに身勝手過ぎて涙が止まらなかった。親は当時弟のことで手一杯だったからと言い訳しつつ昔は些細なことで怒ったり無理ばかりさせて可哀想なことをした、今も夢に見るくらい後悔してると一応懺悔はした。でも自分がしたことを忘れてるのは許せない。
忘れてるなら思い出させてやろうと当時行かされた塾をグーグルで調べると今も潰れておらず経営は続いてた。
だから直接塾に行ってやった。塾の写真と看板の写真を撮って親に送りつけた。その時間が22時になる少し前。親が覚えてないならここのハゲ塾長に復讐するしかない。塾の居残りが22時までだから終わったら直接乗り込んでやるかと待ち伏せした。なのに親が車で迎えに来て今忙しいって言っても乗れ乗れとしつこくて結局その日は帰る羽目になった。しかも「もう塾に行くようなことしないでね」とかほざいてきてマジでハァ?なんですが。中3の自分が居続けることになった。
後日精神科のカウンセリングでこのことを話した。話してる時も涙があふれてきた。だから近いうちに親にバレないように塾に仕返ししに行くと言ったら先生は「暴力を使うのは絶対駄目だけど、あの頃辛かった気持ちをぶつけてこのハゲ野郎!くらいなら言ってやっても良い」と言ってくれた。かといってただ乗り込むだけでは即追い出されたり下手したら警察を呼ばれるかもしれない。だから帰りながら作戦を練った。
中2の自閉症で引きこもりの息子がいる母親になりすまし、このままでは将来が心配だからブラック塾に入れたくて相談という名目で乗り込む。
自分は知的障害(IQ70)兼自閉症、元塾生で障害者雇用で働いてるという設定。んで双子は同じく障害者雇用で働いてる内縁の夫という設定にした。
ブラック塾はハゲ塾長がジジイだからメールなんてもんはなく直接電話して問い合わせ。演技力の見せ所!
ハゲ塾長はあっさり騙されてくれて息子が自閉症で~って言ったら「最近まで発達障害の子も見てたので任せてください」なんてほざいてどの口がって怒りを抑えながら「息子はまだ連れていくのが難しいのでまずは主人と一緒に」と面談に行く日を取り付けた。
念入りに準備。スマホにライトのアプリをインストールし、ワンタッチで光マックスにできるようにする。そして豊田真由子の叫ぶ「このハゲー!」がバンド演奏のボーカルとして合成されてるという無駄にクオリティすごい音源を数分おきに音量マックスでアラームセット。殴るのは向こうから逆上して手を上げてきた時の正当防衛にだけ。
約束の時間になったので突入。塾に入ってすぐの土間?がちょうど暗いのでスマホでライトをつける。すると入り口の横のドアからハゲ塾長が出てきたのでわざとライトをハゲ頭に当てて「うわ眩しい!」と言ってやったw
で、面談の部屋に通され「これはハゲみ(励み)になりそうな所ですねぇ」「ハゲしく(激しく)成績上がりそう」とチクチクディスる。
席に座る際に「自分達軽度知的障害があるので失礼もあるかもしれませんが」と免罪符。一応名前も名乗ったがやっぱり覚えてないと。まあ10年以上たってるし塾生も多かったから無理ないか。
で、引きこもりで自閉症の息子にどうしたら良いのかわからないと口からでまかせも吐きつつ昔みたいに英語の教科書1ページ丸暗記は自分が短期記憶できないから息子も無理だと言ったところ今は覚えられない子は一行か二行ずつ覚えさせてると言ってて結構びっくりした。昔のハゲからは考えられないことを今してんだ。
ついでに今は生徒が減って(まあ少子化進んでるしコロナもあったし)昔みたいに同学年全員でではなく個人授業らしい。昔週3だったのも今は週一のみで苦手な科目を部分的に強化するようにしてるらしい。だから生徒のレベルに合わせられると。居残りも無くなりどんな落ちこぼれも決まった時間に帰すそうな。
だからってハゲが昔出来損ないに押しつけ教育した罪が消えるわけではないから時々メンヘラな演技をして少しキレたように「あんなやり方無駄でしかない!」「本当にこの塾大っ嫌いだった」と声を上げたりもした。
5分後、スマホのアラームから大音量で「このハゲー!(ハゲーハゲーハゲーハゲー←エコー)」。わざと慌ててパニクってるふりして止めずにしばらく流してやったw
推しの子のかなちゃんみたいに10秒で涙流すのはさすがにできないけど30秒もあれば嘘の涙は流せる。嘘泣きしながら自分みたいな発達障害者はクズだから塾の勉強にも追い付けず息子にもこんなゴミカス遺伝子を押しつけてしまった、クズのくせに家族に憧れて子どもなんか作ってしまったとフカシこいたらハゲは昔は競争社会だったから押し付ける形になってしまったと。一応自分のやり方が悪かったことは認めてるんだ、こいつは自分は絶対間違ってないって奴だったけど年食って変わったんだな。また数分後にアラームで「このハゲー!」が鳴り響いたおかげで涙は引っ込んでしまったw
それでもなんとか再び涙を流し自分みたいなクズがクズ遺伝子を継いだ子どもなんか生んでしまいとフカシたら
「あなたはクズなんかじゃないし世の中にクズなんていない」だってさ。は?と思ったがスマホの録音アプリをこっそり起動。じゃあ短期記憶ができなくても計算ができなくてもクズじゃないんだなと聞いたらクズじゃないってさ。散々クズ呼ばわりした親に聞かせようかな。「あなたは話し方も丁寧だし」って言われたけどこれは茶道教室と挨拶とほうれんそうが大事な音楽界隈で身についたマナーであって親のおかげは1ミリもありません。
あ、またアラームで「このハゲー!」がw
今勉強教えてるのはハゲとハゲの息子って言ったもんで「あれ?昔みたいに奥さんじゃないんだ」と離婚したか?死んだか?と思いながら聞いたらうつ病になったんだって、親の介護で。「そりゃざまあみろですねーw」と言ってやった。老人ホームにでもぶちこむか金が無いなら首に縄でもつけときゃ良いのにね。あと自分らも毒親育ちなおかげでうつ病でーすとリスカ痕でズタズタな腕も出してちゃんと証拠見せた。
1時間くらい経過した。とりあえず今は昔みたいな押しつけ教育じゃないことにかなり拍子抜けはしたがハゲが全く怒らなかったから殴る必要も無かった。子どもがいるって嘘もまったく疑われず案内書を渡されて「今の方針が昔と違うのは安心したのでまず息子に話してみますね」と最後まで嘘をつき通し帰宅準備。
そして出る時に大きな声で「ばいばいハゲー!!」と挨拶したww今方針が変わってても昔のやり方が最低だった事実は変わりませんので。
ハゲがキレて殴りかかってきてたらこっちも倍にして殴り返したり窓ガラスの一枚二枚くらい割れたのにちょっと残念に思いつつも気分はかなりスッキリしてた。もう中3の頃の自分も見えなくなってた。
やっぱりねー、植えつけられたトラウマにはきっちり落とし前つけるの大事!復讐は何も生まないとかフカシこいてたの何処のアホ?めちゃくちゃ生んでんじゃん、トラウマ治療と達成感を。
親に命令された通り何もせず泣き寝入りしてたら死ぬまでずっと中3の頃の自分に苦しめられてた。
だから仕返ししに行って良かったって100パーセント言えます!!