四半世紀前、郷里北海道から

夫の住む関西に移住しました。

 

北海道には母がひとりで長年、

住んでいました。

 

母の母(私の祖母)といっとき、

同居していたこともありました。

二世帯住宅、庭の大きな家でした。

 

祖母も、私の父も呆気なく逝き、

母のこどもたち(私を含む🙄)も相次いで北海道を離れ、

母はひとりになりました。

部屋数ばかり多い広い家に

ずっとひとりで住んでいました。

 

関西に住まいを移しても

わたしの心の錨は

北海道に下してあり

夫と小さな諍いをした日など

「私には帰る家がある」と

呪文のように心の中でつぶやくこともありました。

 

母が亡くなり

北海道の家はすぐ売却しました。

手続きがどうのこうの、やれやれだね、と

言っていたそんなときに

夫がふいに逝きました。

 

昨日、街をいちにちふらふらして

家に帰る道すがら

私を「おかえり」と笑顔で迎えてくれる家など

どこにもないのだなと

改めてつくづくと感じました。

 

それでも家に帰り

小さく夫にただいま、と言いいます。

冷蔵庫の音だけがじーんと聞こえる

家です。

 

ほかにいくところなど

ないのです。