lynch.悠介さんと真空ホロウのボーカル松本明人さんで組まれたユニット「健康」。
なにやら個性的なユニット名ですが、今回初リリースされた「健音♯1ー未来-」は映画「アカルイミライ」を題材にしてアルバムが作られています。
★この後、映画「アカルイミライ」のネタバレになります↓
まず「アカルイミライ」ってどんな映画なんだろう?という事でやっとその映画を視聴しました!
監督は黒沢清、キャストは主役がオダギリジョー、浅野忠信、藤竜也の3人がメインに登場します。
工場で働く雄二が唯一心を許せる同僚・守と共に日常を生きていく話。
なんとなく退廃的に感じる日常の中で、同僚の守は猛毒を持つアカクラゲを飼育しています。
本来海水に生息するアカクラゲを真水に少しずつ慣れさせて、海水でも真水でも生きていけるように飼育しています。
ある日守はそのアカクラゲを雄二に託して姿を消します。
彼は工場の経営者を殺害し、拘置所の中で自分の姿を針金で固定し、首を吊って自殺します。
雄二は彼がいなくなった後に、社会に馴染めない退廃的な生活の中から守の父親と出会いその稼業を手伝うようになりながら日々を送ります。
その中で、妹に面倒を見てもらった会社でも一時期働いていましたが、街をうろついている高校生を仲間に引き入れて会社の金庫からお金を盗み出そうとし、あわやの所で警察から逃れます。
守から譲り受けたアカクラゲはひょんな事から手放してしまったのですが、彼らは真水に順応し個体を増やし、真水である川から大海原を目指して泳いでいく。
そんなアカクラゲの強靭な姿を見て衝撃を受けた雄二と守の父親のシーンを最後に、守の父親と関わっていた雄二は姿を消します。
それで最後。
警察に捕まった、お金を盗み出そうとしていた高校生たちは釈放されて集団で道を歩きながら段ボールを蹴り上げて笑っています。
「あいつ、面白い奴だったな」
でエンドロール。
「アカルイミライ」という題名だけにどんな明るい未来が待ち受けているのかと思いきや、全体的に退廃的で社会に馴染めない人間をアカクラゲに託して物語を進めています。
このジャケット、松本明人さんと悠介さんが離れて写真で撮影されていますが、これもアカルイミライを意識して撮影されていると思われます。
(実際にこういうシーンが映画の中に出てくる)
また、「二人のユニット」という所がなんとなく雄二と守を彷彿とさせます。
アンビエント色の強い「淡々」の水の音から始まり「水槽」へ。
僕らはまるで水槽のクラゲ
水が違えば呼吸も出来ない
なのにどうして自由を求め
自ら首を絞めてゆくんだろう
この言葉の始まりが「アカルイミライ」の社会に馴染めない葛藤を描いているような気がします。
そこからの音楽が「アカルイミライ」の雄二と、歌詞を書く松本明人さんの心情がリンクしていくような感じがします。
「月光」では、
いつからだろう自分の夢より
誰かの夢のために生きる様に
働く様に捧げる様になってた
いつの間にか君のためだって
思い込んでた思想は俺のため
になって未来を未来を未来を
最早今を明るく照らしている
序盤から映画を抽象的に、自分をリンクしていくような歌詞から~
YouTubeでも披露されている「針金」へ
この「針金」、守が自分を針金でぐるぐる巻きにして自殺したシーン、守が雄二に対して抱いていた心情、そして「健康」というユニットで相棒である悠介さんとこの先のバンド活動で音楽を届けよう、と意思表示しているようにも感じます。
縛り付けられていた感情を
解き放つにはナニが最適か
俺が居なくなったってお前
が気が付いてくれるように
”革命を起こす夜”
たった一瞬で世界が
変わる変えるお前となら
出来るはずさゆこう
出来るはずさゆこう
音楽も悠介さんらしいな、という持ち味も発揮されている曲だと思います。
ラストの「未来」は、「あいつ、面白い奴だったな」と段ボールを蹴り飛ばして笑っている高校生たちともリンクしますが、序盤の「水槽」に対する答え、
僕らはまるで水槽のクラゲ
水が違えば呼吸も出来ない
なのにどうして自由を求め
自ら首を絞めてゆくんだろう
が、
歪な僕らの世界じゃ誰もまもってくれやしない
歪な僕らの世界を変えれるのは僕らしかいない
と、現実の世界へと前に押し出してくれるような「未来」につながっていきます。
題材にされていた「アカルイミライ」。
もっとポップで明るい映画だと思っていました。
退廃的でダークな映画でもありましたが、映画を見て改めて音楽を聞くと、見る前と見た後では受け取り方が全然違ったものになりました。
できればこの映画を見た今、「健康」のLIVEを見て見たかったな
ツアーファイナルが円盤化されるとの事なので。
早く手元に届いてLIVEを見てみたい!
長くなりましたが、ここまで読んで下さりありがとうございました!