湊かなえの最新作「暁星(あけぼし)」を読みました。あの首相暗殺事件に材を取った小説です。前半「暁闇」は、主人公暁が、母親の宗教妄信により一家破滅になった恨みを、文部大臣がその宗教団体と近しいという理由で殺害する下りやその後の顛末などを、ノンフィクション仕立てに書いてあり、はっきり言って読んでいてもあまり楽しくありませんでした。湊かなえの小説は 好き嫌いというよりも、私の肌に合わないのかもしれません。
犯人は週刊誌に手記を発表して、弟の死は、宗教団体愛光教会にのめり込んだ母親のせいであり、作家の父親が、権威ある文学賞を受賞する事が出来なかったのは、その文学賞の影に愛光教会が見え隠れしたからと暴露していく。その真意はどこにあるのか?そんなみじめな宗教二世としての子供時代でも、同級生の女の子の存在は大きくて・・・。
一転、後半のフィクションとしての小説「金星」になると、俄然面白くなって来ました。「この小説はフィクションです」で始まる暁にとって大切な人である新進の作家が書いた「金星」は、前半部分で語られた出来事を、小説(フィクション)という形で描いています。前半では明らかにされていなかった出来事の真相がわかって、モヤモヤを感じながら読んだ「暁星」の霧が晴れるように謎が解けて行きました。
この新進作家は、暁が密かに思っていた同級生で同じ宗教二世の星子で、小学生から大人になるまで7回しか会った事がない二人です。読み終わってみれば、前半「暁闇」は、暁が自分を犠牲にして星子を守る話であり、後半の「金星」は、そんな暁を今度は星子が守るために書いた小説でもあるのです。そしてそれまでの内容がひっくり返るラスト1行には驚きびっくり仰天しました。暗いばかりの物語の先に夜明けの明星の金星のように、仄の明るさが見えて本当によかったです。
