「少女と母と手鞠歌」
原作:七色アリス
ひとーつ ぐんじょう そらのいろ
ふたつ しゅいろ ちのいろ
少女は
ボロボロの手鞠を手にしながら
数え歌を作り始めた
いつ帰るかわからない
母ちゃんをまってるあいだはいつも何かしらの遊びをみつける
9999回手鞠をつけば母ちゃんが帰ると信じて
手鞠をしていたのだが
9999回手鞠をついても
まったく母ちゃんが帰るふしがみあたらないから
今度は数え歌を作って遊び始めた
いつつ こんじき
むっつ しろいろ
母ちゃんのことをずっと思ってただ待っているよりも
そばにあるおもちゃで遊んでいれば
その時は楽しいから
手鞠のいろんな糸の色のことなんか
考えてれば
すぐに時間がたって
お腹がすいて
眠くなって
また明日がくるから
そうすれば明日こそ
母ちゃんが帰ってくるかもしれないから
そして少女は
今度はそれを唄にしてみようとも思った
複雑に絡みあっている
ボロボロの手鞠の糸の事なんかを考えてみてるうちに
数え歌にして
9999回つけば
その時こそ母が帰ってくるはずじゃないかと
思ったのだ
まずは複雑に絡んでいる糸の色のことを唄にしてみる
遊びすぎて
ボロボロになって壊れてきてしまった手鞠
ずっしりとおもたい手鞠を手にして
少女はずっと糸の色を唄にしてゆく
ななつ むらさき
やっつ くろいろ
この唄ができあがって
9999回ついた時に母ちゃんはきっと帰ってくるだろう
母ちゃん早く帰ってきて
わたしはもうすぐ
母ちゃんよりも歳をとってしまう
それでもわたしは母を待ち続けるために
今日も唄をつくって手鞠を続けるのだ
ここのつ
とおー
2012「Aliceの幻想劇場」