雨が降る度に、夏が洗い流されて行く。
照りつける日差しは日に日に遠ざかり、空が透き通って行く。
ガラス瓶の底のように澱んでいた夏の熱気は、いつのまにか薄れていて。
誰かが開けたサイダーの瓶の中で、気が付いたら炭酸が抜けていたみたいに。
通り雨の足元。
スパンコールを散りばめたクローバー。
夏の落し物。
日陰の紫陽花。
高原の夏に色を変え忘れて、鮮やかに青く、青く、夏の空を模して。
そこここに、夏の忘れ物が宿る庭。
それでも秋はひっそりと、咲き始めていて。
つま先から染まり始める、恋みたいに。
いつの間にか隣にある、小さな秋。
片隅に咲く花。
季節はまた、すれ違って。
交錯して。
あの瓶に確かに入っていた、夏の空気はどこへ抜けてしまったんだろう。
雨の降る日は、カフェオレを。
いつのまにか身に付いていた、お茶の作法。
愛しさを増す温もりに、指先がまた染まる。
恋はみずいろ。
夏のはじめに、連れ帰った花。
この花だけは、枯れずに残る。
私の胸に。
ガラス瓶の底の色。
きらきらと、見上げた水面。
あといくつ夏を数えたら、振り向かずに行けるのだろう。
きっと私も、夏のわすれもの。
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