ネットの波を漂っていると、あちこちで桜の花が満開で。
まるで宴の声を遠くに聞く、それはブラウン管の中を覗く、輪の中から一人外れた淋しさに似た焦燥を思う。

信州にも、いくつかの桜の名所はあるものの。
取り分け、高遠城址公園は有名だ。
西の吉野に並びなぞらえるほどに。

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高遠城址公園の桜は、ソメイヨシノとは違う。
高遠コヒガンザクラと言う、ソメイヨシノより紅を帯びた小振りな花を咲かせる。
城址の丘を染め上げる様は夢のようで、もう長いこと足を運んでいた。

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けれど開花の予報を裏切って、昨日の戻り冬にあてられて、桜はまだこの通り。
かたく春を握りしめたまま、指先を染めていた。

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予報をあてにした大型バスが次々にやって来ては、さぞや落胆かと思いきや。

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「蕾の色が濃くて、まるで紅い雲か煙のよう。満開の桜は見たことがあるけれど、こんな風景は初めて見たわ。素敵ね」

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四季の折々に触れるため訪れる人の、なんて優しく風雅なことかと。

頼まれてもいない同情をしていた私は、すっかり恥じ入って深く頷くばかりだった。

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天は薄紅色の煙に巻かれていたけれど、そのかたく組んだ指は先の方から少しずつ解けているようだった。

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そして、春がこぼれだす。


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昨日はあんなに寒かったのに、今日は暖かかったから。
桜の風味の花より団子…ならぬ、花のソフトクリーム。
(小サイズがあったのは、僥倖)

人はいつだって、楽しむことができるのだ。


こんなに静かな うすべにの夜明けに
まだだれも知らない あこがれの歌が 
高らかにはじまる



あなたが産まれた そのまぶしい朝に
まだだれも知らない 華やかな歌が
静かにはじまった

…夢の大地


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夕焼け、木の影、帰り道。
明日は明日の風まかせ。

遥か春を、臨む山。
遥か春を、待ち惚け。

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