雨の音がした。

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それは春の音だった。
少し肌寒い、薄曇りの朝。
雨脚が屋根に当たる音が、ただ心地よく深い日曜日。
子供が育つのは早いというけれど、ほんとうにそう。
自分が子供だった頃、子供の時間は長かった。
でも子羊や子犬、小鳥の雛があっという間に親と見分けがつかなくなるように。
人間だって、実は瞬く間の出来事だったのかも知れない。
子供はいつだって、知らないうちに大人になる。
この国では二十歳をその境にしているけれど、人生を80年と仮定するならそのほんの先ぶれに過ぎない。
私でさえ、まだ若いと言える。
それにしても、大人になってからの時間は飛ぶようにすぎる。
子供の頃の一日と、大人になってからの一日の長さはまるで違う。
20分の休み時間でさえ、教室を飛び出して校庭でボール遊びをする。
今なら、20分しかない時間で、三階の校舎から階段を降りて校庭まで行く時間が惜しい。
外の時間の速さが同じであることは、時計の針が証明してくれる。
だから違うのは、私たちの中の時間。
きっとキリキリとネジを巻き上げたオルゴールが最初は速いように、同じ1分の間に同じ曲を二回繰り返すように。
今は、1分で一曲。
そうしてだんだん、遅くなるんだろう。
ネジを巻き戻すことは、できない。
そんなことを考えるのも、雨の日曜日だから。
洗濯物は籠の中。
遠くで鳥が鳴いている。
明日はきっと、晴れるだろう。
天気予報も見ようと思えば、すぐにスマホで見られるけれど。
敢えて、怠慢を選ぶ。
ねじまき式のオルゴールが、また一周。
明日もまた、同じ曲を繰り返す。
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