冷え冷えとしたストーブに火を入れて、上昇気流で手を温める。

灯油の燃える匂い。
赤く焼けた金属の筒。

レースのカーテン越しの、雨の音。
12月の雨の朝。

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玄関を開けると、生温い風が吹いた。
室内より、外の方が暖かい。

鞄の中にしまい込んだ赤い手袋は、まだ今年は取り出さないまま。
ブーツのスウェード生地に、咲き残っているゼラニウムの花粉が落ちた。

およそ年末らしくない年末は、強い雨でますますその色彩を流して行く。
いつも満員の病院の駐車場でさえ、こんな日はガラガラで。
薬局で流れていた、やたらポップにアレンジされた第九が空々しく思えた。

投げ売りされたクリスマスを、ひとつ手に取って、戻す。

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誘われた喫茶店で、小豆の入ったミルクティーを注文してみた。
餡子が底にどろりと溶けて、ひどく甘ったるい。
同じ仕立てのコーヒーもあったけど、とても勇気が足りなかった。


帰り道に差し掛かる頃、雨は雪との境目を行ったり来たり。
不意に音を無くしたかと思えば、再び強く洗い流して行く。

躊躇いがちな冬の指先が、今日もまたカーテンを閉めて行く。

年賀状は白いまま。
コタツのみかんは丸いまま。

ストーブの上、お湯の沸く音がする。

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