夜遊びを初めてしたのは、何年前だっけ。

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比較的品行方正に生きてきた私は、その日半ば自棄になって夜の街に出た。
そうでもしないと、やっていられない夜だった。
暗澹たる気持ちを、明るいもので…それが陽の光を真似たミラーボールであったとしても良かったから、払拭したかった。
憧れは10年前からあった。
勇気を出して伸ばした手に、落ちてきた情報の欠片。
10年握りしめていたその欠片を、そっと開いてみたあの夜。
私の世界が、鮮やかになった夜。
初めて潜り込んだ夜の中で、そこだけスポットライトが当たったみたいに鮮明に見えた。
夜を往く、獣のような人。
同じ女と言う生き物として、余りにも次元が違って見えた。
私の目を一瞬で奪い去った人に会うために、通い詰めた夜の数はそう多くない。
片手で足りてしまうほど。
それはその人が、そこから去ってしまったからだった。
その人のいないそこに行く意味は無くて、私の夜遊びも幕を閉じた。
そこから抜け出したその人は、もっと広い世界へ飛び出して行った。
私が追いかけられないほど。
けれど片手で足りるその数回のうち、確かに二度。
人生で立ち止まってしまった私を、その人に引っ張って貰った。
もちろん直接的にじゃないけど、その人に会いに行く事が私の動力源になってくれた。
思えば奇跡的だ。
運命的と思える程に。
あれから何年も経って、その人はすっかり手の届かない人になった。
ファンレターを送るのも躊躇うようになって、液晶越しにその人を眺めるばかりになって。
まさか、また会える機会が来るなんて思ってもいなかった。
会えると言ったって、彼女は壇上で私は客の一人。
数年振りの、夜の街。
まさか壇上から、私を見つけ出してくれるなんて。
降りてきてくれるなんて。
大勢の中から私を見つけ出して、抱き締めてくれるなんて。
上手くいけば、渡せるかな、なんて。
思って鞄に忍ばせていたファンレター。
渡せたらそれだけで、充分満足だと思っていたのに。
そうしたら久々の夜遊びは早々に切り上げて、帰るつもりだったのに。
連日の多忙で疲れたその人が、楽屋で私を枕に眠ってしまったので。
思いがけない、朝帰り。
そう言えば、今も人生を立ち往生してる最中だったな、なんて。
そんな時に現れてくれる、まるで奇跡みたいな人だ。
会いたい人に、会いに行く。
今年のテーマは順調に、私を祝福してくれているようです。
それにしたって大きすぎる祝福に、少々面食らってはいるけれど。
『プラマイゼロ』の考え方はもう捨てたので、幸せを思う存分享受しようと思います。
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