☆獅子心王-ライオンと呼ばれた男④☆

                Richard the Lionheart

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人は精神的なものである。

暗闇の中、私を照らす光を感じる。声が聞こえる気がする。


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リチャード、私はあなたを憎んではいない。私はあなたを憎んではいない。

私が許せなかったもの、私が超えたかったもの、そう、それは、見かけの奥にあるもの。



私はあなたという存在を否定などしていない。



あなたは立派に生きた。



けれど、あなたの中に巣くっている、その闇はまた別の話。

その闇も、その傷も、あなたにはもう不要なもの。

その先にあるものを受け入れる為に、あなたはそれらを乗り越えていかなければいけない。


責任を取るということ。それは死でもって償うことではない。



人はやり直すことができる。



恐れないで。

今までの自分の概念を飛び越える勇気を持って。



あなたの中のその闇を、その傷を光へと変換して。そうすればあなたも光輝く。
自分が光であることを思い出す。



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そうだ。私が欲しかった力、求めていた剣の力とは、この闇を消し去る力だった。

大天使ミカエルの剣と同じ力だ。


私の使命は、闇の世界に光を伝えることであった。

光を呼び込むことであった。


私が剣に誓ったことは、光の道を歩むことであった。



私はずっと自分を許すことができずにいた。



光の道を歩むと誓ったはずが、多くの犠牲を払うことになったのだ。


その犠牲に対して、神の光の為だと理由付けることが正しいことなのか疑念があった。



この広い世界には善い者もいる。だがそれと同じくらい、悪しき心の者もいる。

悪しき心の者はいつも仲間を探し求めている。ほんのささいな弱みに付け込み、善き者の心臓を奪っていくのだ。


味方、敵に関係なく、善き者と悪しき心の者がいる。

私はそれをこの目で見てきた。法と秩序を無視する不届き者が、この世の調和を乱すのだ。




善き者とは誰を指し、悪しき心の者とはどんな者を指すのか。


その論議については、哲学者へと任せることにするが、人の上に立つ者は善き者であり、強き者であるべきだ。

その瞳の奥に魂の強さを読み取れる者であるべきだ。

そんな者が国の守護者である場合、敵味方に関係なく、人の尊厳を尊重することができるかもしれない。



どんな理想があろうと、一度地上に生れ出ると、色々な障害にぶつかる。

あらゆる思惑が渦めいており、自分が誰であり、何を求めて生まれてきたのかを忘れてしまう。



ああ、私は闇を切り裂く光がほしかった。闇を切り裂く光でありたかった。



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神よ、我に導きあれ。



私は負けぬ。

私はもう負けぬのだ。



この世には闇も光も存在している。これは全て在るべくして存在しているのだ。



受け入れよう、この事実を。



闇と戦うことをやめよう。

私はもう負けることはない。私はもう戦いを放棄するからだ。それは責任を放棄することではない。

戦いからは報復しか生まれない。



新たな道を探していこう。



暗闇の中、それでも確かな光を自分の中に持ち続けていく。

私は希望を、光を生み出していきたいのだ。


それが私の剣の誓いであったのだから。



神よ、今こそ道を開かれし。




我、獅子心王として今、皆の元へと帰り付こう。