フー子さんのメリー | 続・阿蘇の国のアリス
「犬をもらいました...
ポメラニャンの、ルイです」


「ルイはやめて...
それに、その犬、
ポメラニアンじゃないよ、
トイプードルよ」


「明日は何をするんですか?」

「メリーさんをひきとりにいく」

「メリーさんって、羊の?
...羊を飼うんですか?」


翌日...

「アリス、お梅とフー子から。
あなたのこと、忘れてないって」


「...メリーちゃんをよろしくね」


(うん)








ソワ、ソワ。ソワ、ソワ。


「誰かきてる」


「...そうですか、ノラクロは
可愛がられていますか」


「メリーもよろしくお願いします」


「カチャ」


「きてくれたんだ...」


「フー子おとうさん」


久しぶりの、
犬を連れての散歩は楽しい...


アリスを亡くした後も、
一人で歩いてはいたけれど、
なんだか間合いがとれなかった。


匂いを嗅ぐのに立ち止まる...


人を見つけて駆けてゆく...


そういう他愛ない犬の仕草が、
結局は散歩の楽しさだったのだと
気がついた。


(メリーちゃん、帰ろう。
あなたが暮らしていた南阿蘇へ)


(そして今度はもっと
幸せになるんだ)


「まずは、
シャンプーしなきゃね」


「お姉さん、
よく引き受けてくれたよね」


「はじめまして♪」


私にとって保健所の扉は
恐ろしいことのある
場所ではなく、
優しいおとうさんと
もう一度会える場所に
なりました。

「きれいにしてあげる」


悪いほうの思い出にだけ
ひきずられるわけには
いきません...

「テヘッ♪」


死ぬまで愛し合おうと
フー子おとうさんと
約束したんですから。


「ところで、
フー子おとうさんは、男?」


「女らしい、男かな」


「ゲッ」










「ううん、男らしいよ」


「...懐かしい手」


「だあれ?」


アリスを亡くして、
初めての春です。

「...パパ?」


午後7時、
シャンプーが
終わったみたいなので、
今から迎えにいきます。