いつか見た桜 | 続・阿蘇の国のアリス
「きょうは広島から
婆ちゃん号で来たよ」


「アリスママ...
黒亭のつぎはどこなの?」


「アリスも来た、
くまもと春の植木市よ。
440年以上の歴史を誇るの」


いきなり強い光を見たように、
思い出が弾けた。


気がつくと、
パパとふたりで、
見覚えのある広場に
立っていた。


「アリスっていうの...」


「精一杯生きてるの」


2月8日


3月10日


「アリスちゃんに
会いたかったな...グスン」

「シュシュにも見えるの?
ぼくにも見える」


風が吹いて、
数枚の桜の花びらが
運ばれてきました。


私は、桜の花びらが
風に舞うのを見るのが
好きでした。


「歩けなくなったとしても、
翼を失ったわけじゃないから」


「地面に横たわっていても
風は感じるでしょう。
全身で向かい風を感じる...」


「生きていることを、
風は教えてくれる...」


それはいつか、
パパが口にした言葉でした。


「それに、
歩けなくなったとしても
見える景色はあるはずだよ」


(ああ、パパの胸に
もう一度抱かれたい)

「ああ、アリスをもう一度
抱きしめたい」