ありふれた日常 | 続・阿蘇の国のアリス
「アリス、雪だよ」

そう言いながら、
パパは玄関のドアを開けました。


室内にサッと外の空気が
流れ込んできました。


風が私の髪を揺らしましたが、
心のなかの不安まで
吹き飛ばすことはできませんでした。


本当に、このままパパとママに
甘えてもいいのかな?


デッキで身体を硬くしながら、
私は、不安と迷いと罪悪感に
押し潰されそうになっていました。

トイレさえひとりじゃ出来やしない...


アリスのドッグランも...


イノシシ林も、
私にはもう必要ないんだ...。


パパとママに頼ろうとしている
自分の弱さが嫌になる。


いっそのこと、私なんか...




「気にすることはないよ、アリス」


私の心を見透かしたように、
ママが軽い口調で言いました。




「アリス、待っててね、
お梅の誕生プレゼントを
買ってくるから」








「これを見ると、アリスが
元気だった頃を思い出すね...」


「九州でただ一つの(モンベル)
フィールド店です」


「つぎは、街に行って、
アリスのご飯を買おうね」


「皆、アリスを家族のように
思っているんだから」


私を気遣ってくれる
皆のやさしさが胸に染みます。


「ありがとう」って伝えたいのに、
言葉にできないのがもどかしいな。


翌日(23日)...


「雪が解けたから、今日は
イノシシ林でトイレしようね♪」


「がんばれ、アリス」


「ダメ、歩けないよ...」


「ビール出た...」

「ママー、アリスオシッコしたよーーつ!」


「少しは歩けたじゃん♪」


ありふれた日常の、
あたりまえだけど
あたりまえじゃない、
かけがえのない幸せ。

ずっとずっと、
取り戻したいと願っています...。