辛抱 | 続・阿蘇の国のアリス
1月3日(水)。

「アリス、歩ける?」

「うん...」

ビールのようなオシッコをしたら、
旅の始まりです。


ママ
「今日もいい天気♪」




※的石原野


「今年も三人で、ここに来れたね...」


「左から、根子岳...」


「高岳...」


「中岳...」


「杵島岳(手前は米塚)...」


「烏帽子岳で、阿蘇五岳...」


「...アリス、見えてる?」

「見えてるよ...
パチパチしてるでしょう」


「あれは、九重連山...」


「そして、ここが...」


「ママの故郷の、高塚愛宕地蔵尊」


「ゲッ、ゴンゴンいうところだ...」


「そう、アリスがきらいなところ...
ごめんね、ゴーン!」


ぼくは若い時から長く、
神の存在を否定して
生きて来ました。

それが今は、
神社や寺院を通る時も
祈るようにしています。

時間があれば手を合わせます。


「パパは私とアリスのために、
ここまで来てくれたんだから、
許してあげて...」


「ねぇパパ、アリスは最期
どんなふうになるのかな?」


こういうことをぼくの前で
平然と口にできるところが、
すでに彼女は冷静ではないのです。


アリスも辛抱をせねばならぬ。


ましてや、彼女もぼくも。


「さあ、帰ろうね」


「アリス、きれいな空...」


「見えてる?」


「見えてるよ...
パチパチしてるでしょう」


「今年も良い年でありますように...か」


偶然、彼女の母親から電話がありました。


「正月は帰ってこんとかい?」

「今、帰ってきちょる...高塚におる」


「家に寄んなさい」

「寄られん、犬がおる...」


「アリスはまだ生きちょるとかい?」

「生きちょる」

「そうかい、なら仕方がない、
帰ってあげなさい」

彼女の母親もまた、
辛抱せねばならぬ。


「ねえ、パパ。私、生きていてもいいの?」


※コッ、コッ、竹やぶ




「生きなきゃ、だめなの」


「うん」