十三夜 | 続・阿蘇の国のアリス
11月1日は
十三夜でもありました。

そのことは、
ジュジュかあさんの電話で知りました。

「十五夜を眺めて、
十三夜を見ないのは、
片月見(かたつきみ)として
忌みきらわれているんですよ。
だから、必ず見てくださいね」


「天に行くのか....」

静かにしている
アリスを見ていると、
飛び跳ねていた時間が
いとおしくもあり、
切なくもあります。


愛する者を想う何万人の人たちが、
今夕、月を仰いでいるのでしょう。


哀しみだけを想うのは
やめなくてはなりません。

どんなに短い一生でも、
そこには四季があったはずだという
言葉があります。

笑っていた日を想うことが
愛する者の死への尊厳ではないでしょうか。


愛する者たちがただ不運であった
と思うのは、その者の生も、
今を生きる私たちの生をも
否定することになる...。


アリスを抱きしめながら、
ぼくはこの犬はどこか夢の国から
舞い降りて来たのではないかと、
今でも思っています。


「アリス、聞こえるかい?
シカが鳴いているよ」