闘病一年 | 続・阿蘇の国のアリス
延髄は脳と脊髄をつなぐ
インターチェンジ。

脳からの指令が全部そこを通過する。

足を動かす、腹筋・背筋を動かす。
そして、延髄自身がつかさどる
機能もある。

それは呼吸、ものを飲み込む動作、
体温調節など生きる上で
欠かすことのできない基本的な機能。

「私はただの脳腫瘍ではないんだ」


病院から帰った私は、
一命をとりとめていました。

「ねぇ、ママ。
私、死ななかったの」

「そう...
たくさん冒険して強くなったから」


「アリス、今日で闘病一年になったのよ。
よくがんばったわね、ありがとう」


「菓樹のケーキ?」

私の手が伸びました。


「そう。元気だった頃。
毎週のように食べていたケーキよ♪」

胸がこわれそうなくらい脈を打ってる。

私はケーキを欲しいと
ママの胸元に前足をかけました。


鼻の頭についたクリームを
赤い舌で舐めると...。

クスッ、とママは思わず笑いました。

「大好物だったの♪」


「よかった」


「よかったね、アリス♪」


「来てたの?
釣りキチ店長、ぶたモン」


いつか、
「虹の橋」で再会を果たしたなら、
私はママの顔じゅうに
幸せのキスを注ぐでしょう。

そしてママと並んで虹の橋を渡るのです。