いいことはやってこないのかな。

声をだして笑うことも、
涙を流すこともなくなったのかな。

いったい自分はいつまで
耐えられるんだろう。

ただ私が生きていることが...

ママとパパの思い出づくりに
なるんだったら...
生きる支えになるんだったら、
私は心底生きたい。
「アリス~、歩いておいで~♪」

こんなこと、
脳腫瘍になる前には、
想像さえできなかった。

土曜日の午後、家族三人で
「ボンジュール」さんに行きました。

パパは私のために
ドーブプロヴァンサルを
追加しました。
地元阿蘇のあか牛のすね肉を
一滴も水を加えず、
赤ワインにハーブと塩だけで
4~5時間煮込んだ
このお店の自慢の逸品です。

「アリス、よくがんばったね」

「もっとください」

「アリス、次は冒険に行こうか」

「アリスが泳いでる、がんばれ!」
めずらしくパパが
興奮しているようです。

きのうは死にかけていたのに、
きょうは川で泳いでる...

耐えることのなかにも、
しびれるようなおかしさが
あるものです。

未来は誰にもわからない。

だが、決してそれは
悲しみだけではないはずです。

曇り空や雨降りに耐え続ければ、
こんな素敵な贈りものを
もらうことがあるのです。
「...パパ、私、死にたくないよ。
バースくんもきっと...」