ぶたモンの恋 | 続・阿蘇の国のアリス
「バレンタインのお返しは、
ケーキバイキングでいい?」


ホワイトデーを前に、
パパは食い意地が張った
女子を誘いました。


その中には、
ぶたモンが心を寄せる、
サワちゃんもいました。


ぶたモンはサワちゃんと
デートがしたいがために、

「ケーキバイキングの後の
ステーキをおごるから...」

といって、ついてきました。


ケーキバイキングの場所は、
いつもの、「シェ・タニ
瀬の本高原店」さんです。


「アリスママ~♪」


メンバーを見た田中店長の顔が
一瞬こわばりました。以前、
3人が30個以上のケーキを
たいらげていたからです。




「ホールケーキはだめですか?」

「だめです(キッパリ)」


先陣を切ったのは、
アニマルキョウ子ちゃんでした。


キョウ子ちゃんはバイキングなのに、
切り方が小さい、といって
ブツブツ文句をいいました。


ホーちゃんは恐怖のあまり、
パパに助けを求めました。

「私まで食べられてしまいそう」


私は皆がケーキバイキングを
楽しんでいる間に、
ご飯と一緒に薬を飲みました。


「幸せなワンちゃんだこと...」

それを見ていた
別のお客様は小さく呟きました。


平均20個のケーキを食べたところで、
皆は豊後牛ステーキのある
「べべんこ」さんに向けて出発しました。


偽物...


本物。




ぶたモンが
食い意地の張った
女子におごったのは...

パパがおごった
ケーキバイキングの倍はする、
ステーキ定食3980円でした。


ドーーン!


パパは自腹で
「じゃらん」に記載されていた
花咲くどんぶりを食べました。


トクナガくんは自腹で
焼肉丼を食べました。

「ぶたのケチ!」


ホーちゃんも...


サワちゃんも幸せそう♪


アニマルキョウ子ちゃんは...
とり天追加です。


「まだいけそう...」


パパとトクナガくんは別に精算しました。


この日から、
私はパパの胸の中に戻りました。


「アリスちゃん、がんばってね」

「ドンちゃん、ありがとう」


パパの胸と別れて四、五日。
それなのに懐かしさに
心をさらわれそうになります。


私は心のなかまで染みてくる
雨を眺めていました。

いつか、パパとは、
決定的な別れのときが
やってくるでしょう。


でも今はこのままでいい。


今このときを逃さないようにしよう。


頭のなかでは同じ言葉が
ぐるぐるとまわっていました。


「ジュジュかあさんも
ここの足湯に入ったのよ」

「そうなの。早く会いたいな」


旅の終わりに、
ぶたモンがサワちゃんに
勇気をもって告白しました。


「こんどは二人だけで会ってくれるかな?」


「いいよ」

サワちゃんは笑って答えました。


それが、
ぶたモン45歳の春でした。