重くない? | 続・阿蘇の国のアリス
「ねぇ、パパ。重くない?」

「重いよ。でも、それでいいんだよ」


「どうして?」

「アリスがちゃんと
食べてるっていう証拠でしょう」


「パパ、きょうはありがとう。
ここまで連れて来てくれて」

「ううん。パパの方こそありがとう。
アリスとまたこうして
ここに来れてうれしいよ」


「アリス、覚えているかい?
二人でこの場所を渡った日のことを。

浅いと思って、
お前の首輪をつかんで
渡っていたんだけど、
途中で足がつかなくなっちゃって、

激流をもみくちゃになりながら
二人で泳ぐはめになっちゃったね」


「うん、覚えてる...
あの時、パパだけが
先に対岸に渡ったから、
私、急に不安になって泣いたんだよね。

でも、すぐに気を取り直して、
また川に飛び込んだんだ。

今度は体を上流に斜めにして
下流に流されずに
パパのところまで渡れた。
そしたらパパ、
すごく褒めてくれて...」


「だからかな。
今でも私は川が大好き。
そしてパパが大好き」


南国の渓流は素晴らしい...


まだ私が元気だった頃。
美しく澄んだ水を持つ川に沿って
走る道が曲がるたびに
私は感嘆の声をあげていた。


「アリス、重いよ...」


「チッ、重くても運べ」


「パパ、また連れて来てね」