私、歩ける | 続・阿蘇の国のアリス
「ヤキトリ、ごめんね...。
今の私は、あなたに近づくことさえ
できないの...」

日曜日。
せっかくヤキトリを
見つけだしたのに、
私たちは助けることが
できませんでした。

私は500メートルも歩けないし、
ポニーのポニョが、
パパに噛みついて邪魔をしたのです。

「ぼくはただ、
エサをくださいと言っただけ」


月曜日は雨になりました。

やっぱり、
ヤキトリは現れませんでした。


「アリスちゃん、いらっしゃい♪」


「やぁ、ムーちゃんとリーちゃん」


「ボワ・ジョリ」さんに行くと、
ムサシくんとリリィちゃんが
心配して駆け寄って来ました。

「元気出してね...」


「よかったね、アリス。
友だちから励ましてもらえて」


「うん」


ビールのようなオシッコと
ヘビのようなフンは
「恐ヶ渕」でしました。


「パパ、片づけてね」
「ハイハイ」


「ママ、お水」
「ハイハイ、いっぱい甘えていいよ」


雨が上がると、ママが、
「チョコレートを買いたい」
と言い出しました。

パパはママに、
「ハイハイ」と言いました。


土屋シェフ監修の「アソフォレ」さん


ママは次の会議で、
社長とコンサルに渡すための
チョコレートを買いました。


ちょっと寄って
8000円も使ったので、
パパは「イヤイヤ」
と、文句を言いました。


次にママは、
「温泉に入りたい」
と、パパに言いました。


ママが「湯ら癒ら」の半額券を
持っていたので、
パパは「ハイハイ」
と、答えました。


温泉から上がると、
ビームさんから電話があったので、
パパは、私が動けなくなった時の
トイレの相談をしました。

「ビームの場合は
寝たまましていましたよ」


会社に行くと、
イケメン店長とにせモンが、
代わる代わるに私を抱きしめ、
励ましてくれました。

「おかしくなっちゃうくらい心配したよ」


私は精いっぱい尻尾を振って、
答えました。


お梅とフー子からは、
胴輪と床ずれ予防サポーターを
もらいました。

パパが、
「ぼくの誕生日プレゼントはいらないから、
アリスにあげて」
と、伝えていたからです。


「みんなのおかげかな。私...歩けてる」

私は思い切り下唇を噛みました。

そうしなければ声をあげて
泣いてしまいそうだったからです。