彼女が、抗がん剤(分子標的薬)
を飲みはじめて
一年九ヵ月になります。
彼女は一年半の余命を越えて、
今も生きています。
五年生存率はわずか5%だそうです。
時々ぼくは、
彼女に同じ質問をします。
「どうして、いつも笑っていられるの」
すると、必ず同じ答えが返ってきます。
「今が楽しいから」
さて、今日は、
彼女の外来での定期受診とは別の、
「脳転移の再検査」の日です。
去年の10月の検査で、
転移のうたがいが見つかったのです。
病院に着いたら、
まず静脈注射。
特殊な薬剤が入っていて、
MRIでみると、
その薬剤が発病している
部位に集まるから、
もしがんだった場合、
わかるそうです。
何もしてやれないぼくは、
彼女に海馬(脳)の御守を
握らせました。
検査結果は、
31日の定期受診で報告されます。
「ねぇママ...。
不安なはずなのに、
どうして笑っていられるの」
「今が楽しいから...」