この冬いちばん、雪が積もった日も、
三人で旅に出ました。
木に支えられて、オシッコをして...
ママに捕まえてもらいながら、
フンをして、
それから行きました。
「ヤキトリがいないと、パワーが出ないや」
それなのにパパは、
よりによって、
「上色見熊野座神社」に行くなんて...
どうかしてる...。
「私もママも行かな~い」
「じゃあ、一人で行ってくるね」
もし、アリスが死んだなら...
狛犬になれるといいね...
大好きだった場所を、
毎日眺めて暮らせるから...
「神様、ウチの娘を、どうぞよろしく」
それから三人で、
「旧上色見小学校」に行きました。
私は、誰も歩いていない
雪を見て喜び、
自分の足跡を付けました。
足をひきづりながら付けました。
そしてママも足跡を付けました。
やがて、
その二つの足跡は、
重なりました...
私とママが、
強く抱きしめ合ったからです。
私とママは
ゆっくり、ゆっくり、歩きました。
足元がおぼつかない私は、
数歩歩いては、はあと
ため息をついて立ち止まりました。
立ち止まって
ママの顔を見上げて言います。
「疲れたよ。休もうよ」
二人で風の匂いを嗅ぎ、
二人で道端の花を愛で、
二人の絆は一段と深まりました。
「私は、狛犬様よりも、
ママと一緒のお墓がいい...」
その日の最後に、
私はママにそう伝えました。