トイレの前で | 続・阿蘇の国のアリス
夜。
仕事から帰って来ると、
アリスはリビングで
寝ていました。

手を洗って
うがいをすませた後、
ぼくはトイレに入りました。

すると...

床を歩く足音が
だんだんと近づいてきました。
我が家はボロ家だから、
すぐにわかるのです。

「あんなにぐっすり寝ていたのに」

やがて足音は、
トイレのドアの前まで来たら、
ピタリと止みました。
そして、ため息といっしょに
腹ばいになる音が響きました。

「いちいち起き上がって、
そばに来なくていいのに...」

ぼくはトイレの中で涙ぐむと、
小さく呟きました。

なるほど、
ぼくの愛犬は
この先死んだとしても、
ぼくのそばから
いなくならないのかもしれない。

たとえ、
姿は見えなくても、
いつもこの傍らに、
ぼくのそばに、
優しく寄り添ってくれることを、
ぼくは信じます...

「ねぇアリス、そうだろう」