アサギマダラに願いを込めて | 続・阿蘇の国のアリス
「お願い、どこか連れていって...」


大雨のピークを過ぎた午後、
わたしたちは南小国町の
「風のもり」さんを目指しました。


「カナちゃん~♪」


「アリちゃん、久し振り~♪
元気にしてた?」


「ううん、元気じゃなかった...。
咳が激しく出て、苦しくて、
貧血で何度も倒れたの」


「もう、治ったの...」


「まだ、治っていない。
薬で治療しているけど、
今日もフラフラしてるの」


「ここに来れば、
何か良い手立てが
あるんじゃないかといって、
パパが連れて来たの」


「それだったら、
イノシシの骨付き肉が一番!
猟犬はいつもそうしているの。
今度用意しとくね。
はい、今日は玄米ミルクリゾット」


「いただきます、食欲はあるの」


食事の後、
パパと二人で庭の散策を
しているときでした。


群生するラベンダーの花に
かくれそうになりながら、
見たこともない蝶が一匹、
目に入りました。


わたしは胸がドキドキしてきました。


ゆっくりと近づくいてゆくと、
それはまぎれもなく、
「アサギマダラ」でした。


最長2000キロにもおよぶ
日本で唯一旅をする蝶です。


わたしたちは、
その蝶に願いを込め、
そっと離しました。


「てんたんママさまが
元気になりますように...」


「てんたんくんが
天使に迎えられ、
会いたがっている仲間と
再会できますように...」


願いを託された蝶は、
ふあふあと舞い上がり、
大分の空へと飛んでゆきました。

今までありがとう。
ママの子になれて、幸せでした。
わたしはいなくなっちゃったけど、
心配しないで。
大勢の友だちにかこまれて、
楽しく過ごしています。
だから、悲しまないでね。
こんど生まれ変わっても、
ママのこどもになりたいな。
そのときは、ママ、
わたしを見つけてね。