西原村へ... | 続・阿蘇の国のアリス
明け方、
目の前にある生垣から
「ピョ、ピョ、ピョ」と
雛の鳴き声が聞こえてきました。




わたしは耳をピクリとさせて、
キビタキの卵が
かえったことを知りました。


その日の午後。
パパは巣箱を覗き込んで、
シジュウカラにつつかれました。


「元気でよろしい」


その日の旅は、
大きな深呼吸で始まりました。

熊本地震で大きな被害を受けた
西原村へ入るからです。


「抗がん剤を受け取る
薬局は大丈夫かしら...」


薬局は大丈夫のようでしたが、
集落は壊滅的な被害でした。

...このあたりで、
住民3人が亡くなられています。


「プレーリーハウス」さんに行くと、
ゴールデンウイークから
営業を再開していました。


人の幸福に対して
かける言葉は
無限にあるけれど...
不幸に対して
かける言葉はありません。


悲しみに沈む人には
何も言えないのです。


パパは代わりに、
枯れそうな花をたくさん買いました。

店主は泣きました。

「常連さんが来て、
花を買ってもらうことが
今一番うれしいんです...」


その帰り道。
ママとパパは
西原村の「やぶ」さんで
そばを食べました。




途中、涙でそばが見えなくなりました。