わたしの桃源郷2 | 続・阿蘇の国のアリス
釣りキチ店長の
車を見つけた私たちは、
彼の元へと駆け寄りました。


「釣れたー!」


「風が出るまでは釣れたんだけどね」


「これからどうするの?」


「もう少しネバってみようと思う」


「アリス、何してるの~!
そろそろ行くよ~!」


私たちはそこからまた、
山奥へと進んでゆきました。


そして今日のポイントでもある、
尾向小学校の校庭の真ん前で
車を止めました。


その日の気温は3度。
刺すように、切るように
冷たい川の水でした。


パパは、
今日は寒いからといって、
ママには竿を渡しませんでした。


私はパパのうしろを着いてゆき、
ヤマメが釣れるのを
パパの前でじっと待ちました。


一昨年はこうして、
パパが掛けた大物を
何度もくわえましたが、
ほとんどは糸が切れて
逃げてゆきました。

パパはその度に、
私を睨みつけるのですが、
最後は笑って許してくれました。


しかし今日は、
パパがへたくそなのか、
私がいるからなのかわかりませんが、
全く釣れませんでした。


お梅とフー子は寒さのためか、
愛し合っているせいか、
身体を寄せ合い
これまた全く釣れませんでした。


「私は愚かな旅人だろうか...」


校庭を通って車に戻っていると、
児童が集まってきました。


しばらくボール投げをして
一緒に遊びました。


「次はがんばろうね...」


帰り道、
ダムのバックウォーター付近で
釣り名人ワタナベの車を見つけました。
彼はまだ釣りをしているようです。