2月のある
寒い日のことでした。

一匹の少女犬が、
南阿蘇の小さなお店に、
ふらりとやってきました。
「この花を、
ここに置いてもらえませんか?」

店のあるじは尋ねました。
「どうしたの?」
すると、
少女犬は答えました。
「じつは、
私のママが病気に
なってしまったので、
この花を売って
薬代にしたいんです…」

あるじは、
少女犬のやさしさに
胸を打たれ、その花を、
ここで売ってもいいと
返事をしました。

少女犬は喜び、
庭を駆け回り、
店の前で花を売りました。
「どなたか
花を買ってください」
「クリスマスローズという花です」

しかし、
花はいっこうに
売れませんでした。

やがて、
雪がちらつきはじめ、
大雪へと変わりました。

少女犬は、それでも、
花を売っていましたが、
だんだんと、
雪に埋もれてゆきました。

その頃、
何も知らないママは
ひたすら祈っていました。
「あの子を返してください…」

するとそこへ
天使が舞い降りました。
天使の名前は、「ネネ子」。

ネネ子は、
雪雲を吹き払うと、
青空に変えました。

花は飛ぶように売れ、
少女犬は薬代を持って、
ママのもとへと
帰ることが出来ました。

そうなんです。
ネネ子は呪いの人形
なんかではなく…

ほんとうは天使だったのです。
