「サンチャゴ・デ・コンポステーラ巡礼」、もし旅を続けなかったら永遠に知らないままの言葉だったかもしれません。
サンチャゴ・デ・コンポステーラはスペインにある都市、ガリシア州の州都。聖ヤコブの遺骸が祀られていることから、キリスト教信者にとって重要な巡礼地の先となっています。聖ヤコブはキリストの12使徒の1人でフランス語ではSaint Jacques。聖ヤコブのシンボルは杖、そして帆立貝、そこからなのかフランス語では帆立貝をcoquille Saint Jacquesというそうです。ヤコブはもともとガリラヤの漁夫でヨハネの兄弟にあたり、キリストともとても近しい人物だったそうです。殉教したヤコブの亡骸はエルサレムから遠く離れたスペイン北西部で813年になって発見されます。その墓の上に立てられたのがサンチャゴ・コンポステーラの大聖堂というわけです。(サンチャゴはスペイン語で聖ヤコブを意味します。)聖ペトロの遺骸の上に築かれたのがバチカンの聖ピエトロ寺院とされているのと同じようなものでしょうか
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いずれもキリスト教徒にとって巡礼の地となっています。私はどうしてか、教会にいる方が落ち着き、讃美歌を聴くと心がとても穏やかになり、陽の光を通したステンドグラスを見ると失われた情緒が復調してきます。旅先で必ず教会に立ち寄り、しばし何をするでもなくぼんやりとしているのはもしかしたら、偶然の必然なのかもしれません。
キリストの12使徒は絵画などにもたびたび描かれており、その意味やバックストーリーが分かれば、より理解が深められるのではないかと思い、使徒とされる聖人たちについて調べていくなかで、一人の聖人の名が印象に残っていました。それが聖ヤコブでした。
あるとき、宗教学が専門の先生にこう尋ねました。
「どうにもこの聖ジャックが気になります。」と言う私に、先生は穏やかな口調でこう返して下さいました。
「それには何かしらの意味があるから、そういうときはその意味をよく考えてみるといい。」
意味を考えると言ってもなぁ…と自問しながらも、答えは特に出ず季節が変わっていきました![]()
。そしてこの旅を計画し、気になっていた土地を結んでいくと、一つの円になりました。
フランスにはサンチャゴ・コンポステーラ巡礼に4つの道があります。トゥールの道、リモージュの道、ル・ピュイの道、そしてアルルの道。私が今回廻った行程はこのうちの2つの道に交差するものでした。
「その地で、その場で、それが何なのかを近くに見てきなさい」
答えの出ないままだった「何かの意味」を解く手がかりとなりそうな、そんなメッセージが込められているかのように。
アルルの駅から徒歩20分強、旧市街を抜けテクテクと歩き、中心から少し外れたところに古代ローマ時代の遺跡でもある古代墓地アルスカンはあります。ゴッホの絵のモデルとなった地や、アレーナなどアルルの観光スポットとは少し趣きを違えた、独特の異質の空間、そのエントランスにはそこが巡礼ルートのスタート地点であることを示す案内が置かれていました。大きなリュックと杖、そして帆立の貝殻をつけた巡礼者を何人か見かけました。彼らの「求める道」への旅の始まりを見つめながら、彼らの前途の穏やかなことを祈らずにはいられませんでした![]()
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