世界を旅するなかで、「ある瞬間」に身を置くことがあります。
それは音と共有する、旅の「ある瞬間」。
人や車の行き交う雑踏の中、また逆に無音に近い絵や、歴史に向きあっているとき。
ふと耳を澄ましたときに耳に届く偶然に流れる音楽を耳にするとき。
やがて旅が終わり、日常に戻れどもその音を聴くと、瞬時にその旅にタイムスリップ出来ます
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スター島からの帰り、満天の星空を見ながら聴こえた'Wonderful Tonight'。
初めてのニューヨーク、遠くに霞むスタテン島と自由の女神を見たときに浮かんだ"Let the River run"
パリの地下鉄の中で少年が車両から車両に弾いてまわっていたバラ色の人生。
生きる力を取り戻させてもらって、JFKで搭乗待ちのときに聴いた"My one true friend"
モルガンライブラリーで圧巻のコレクションを鑑賞し、カフェでワインをオーダーしてリラックスしていたときに聴こえてきたマスカーニのカヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲。
サットンプレイスの探検の中休み、ガイドにも載っていないとっておきの場所を見つけたときに私の心で聴こえてきたムーンリヴァー。
視覚で、聴覚で、味覚で、めいいっぱいアンテナを張り巡らせて。
感性を緩やかに、またときに鋭敏にして。
旅先だからこそ響いてくる、心に届く「ある瞬間」がある限り、旅から得るものは限りない。
それがなくなったとき、そのときが旅を終えるときなのかもしれません。
