旅の楽しみの一つが各地で訪ねる美術館や博物館。
もともと大人数でわいわいと騒ぐよりは、心許せる人とゆったり過ごせる方がよく、
賑やかな音楽は苦痛でしかなく、静かな音に囲まれていたいという私。
1人旅の最高の時間の一つが、平日の昼下がり、
人出の落ち着いた空間でアートと対峙するときです
。
今やあらゆるものが瞬時に、簡単に手元に記録として残せるこの社会。
はり巡らされた電波に見張られて、便利か不便かどこにいても情報に囲まれる日々。
旅はそんな日常から、しばし自分を解放出来る猶予期間でもあります。
こんなときこそ、たっぷりの芸術に囲まれる贅沢の絶好のチャンス。
日本でも時折開催される○○美術館展や□▲コレクション展に出かけてきましたが、
旅の機会が増えるに従い、好んで出かけることはなくなりました。
何しろ人が多く、絵を見ているのか人を見ているのか分かりませんから
。
ロンドンのナショナルギャラリー、ターナー美術館。
パリではルーヴルにオランジュリーにオルセー。
ブラッセルの王立美術館、ウィーンでは市立近代美術館、
フィレンツェではウフィッツィ。
ワシントンのナショナルギャラリー、
ニューヨークのメトロポリタン美術館、MOMA、ボストン美術館にフィラデルフィア美術館。
「世界の美術館」なる連載があれば必ず登場しそうな大物美術館ばかり
。
たくさんの名画を鑑賞する機会に恵まれました。
もともとルーベンスが大好きで、葉書を集めたり鑑賞に出かけたりしていました。
ヨーロッパを巡ると必ずといっていいほど感傷の機会があるのがルーベンスです。
その中でも別格だったのが、ルーヴル美術館でした。
広大な室内に歩き疲れた頃、たまたま入った部屋がルーベンスの間でした。
そのスケールと圧倒感は今も忘れません。
時間が経つのも忘れて室内一面に飾られたルーベンスの絵に見入っていました。
やがて印象派の絵にも興味を覚えるようになったきっかけが、オランジュリーでした。
モネの「睡蓮」の連画にぐるりと囲まれたあの贅沢。
展示の妙にも感服しました。
モネは晩年、眼病によってその視力を徐々に失っていったそうです。
死期が近づいていくごとにあの「光」の画家が「闇」を描くようになっていきます
。
一枚の絵を見るのに、画家の人生を少し学んでみていくと、
全く違った絵との「対峙」が出来るんだ…そんなことも学びました。
そしてかつては「どこがいいの?」と思った絵が、
歳を重ねるにつれ「…なんと素晴らしい絵なのか。」と思うようになることも。
「その絵を見るために、その絵に会うための旅」
私には三度訪れました。
その三枚の絵は、私にとってこれまで見た何百点もの絵画とは全く別の特別な絵。
その始まりになった絵はニューヨーク、メトロポリタン美術館にありました
。
