昨日の荒天がうそのように、今日はスッキリと晴れている。雲ひとつ無い、青い空。
そんなとき、彼のことを思い出す。今頃どうしているだろうか。
数年前、久しぶりに会わないか、と言われ銀座で待合わせた。
2年ぶりに会った彼は少し痩せていた。
軽く食事をしながら、とりとめのない話をする。
あなたがいない日本では、こんなことやあんなことがあったんですよ。
外国で生活する彼の、つかの間の帰国中でのことだった。
正直、好きという気持ちとは遠かった気がする。
年上だから、なんとなく憧れや頼れる存在だったのかもしれない。
当時、あまりうまくいかない日常に嫌気が差していた私は、とにかく話を聞いてもらっていた。
本当はもう終電に乗らなくてはならない時間なのに。
これからどうする?との彼に、「きれいな夜景が見たいです。」と答えた。
もう帰りますよ、と言うつもりだったのに。自分のセリフじゃないみたいだ。
嫌なことがあると、夜景が見たくなるのは今も変わらない。
特に、高い場所から東京を見るのが好きだ。
そこから、光のシャワーを見ていると、だんだんと焦点が合わなくなり、そのうち全てが
どうでもよくなってくる。
あの動いている車の一台一台に家庭があって、家族があって、人生があるんだよなー、なんて
思いながら、高層ビル群を見下ろす。
そして、ちっぽけな自分を思う。
彼が連れて行ってくれたのは、都内のホテルだった。
私は特に深く考えることもなく、チェックインする彼の後姿を見ていた。
ここは夜景がきれいなのだろうか。
そんなことしか頭になかった。いや、本当はもっといろいろ考えていたかもしれないけど
もう思い出せない。
部屋に入り、ベランダに出る。
金曜日の夜ということもあり、低層階の部屋しか取れなかったよ、と彼。
窓からの景色は私が期待していたものとは程遠い。
少しがっかりして夜空を見上げた。曇っているのか、明るいせいなのか、星も見えなかった。
気がつくと彼が隣にいる。彼の感情が、不思議と静かに流れてくるような気がした。
- あと、2年は向こうにいないといけないんだ
- ・・・2年。長いですね
- やっぱり長い?
- 今日だって2年ぶりですよ
- そうだっけ?ああ、そんなもんか
- ・・・
- 待てない時間?
- ・・・
- だよなあ
そして、ぎゅっと抱きしめて、長い長いキスをした。