風の中のマリア
百田尚樹著
講談社文庫
2013.7.29読了
☆☆☆☆
主人公のマリアはオオスズメバチのワーカー(ハタラキバチ)。蜂を擬人化して物語が組立てられていて、その発想は斬新です。しかしストーリーは決して創り事ではなく、彼女たちの世界では実際に行われていること。生物学的な解説もあり、ともすればマニアックな内容もよく理解できます。
勇敢な戦士として生まれたマリア。しかしその寿命はたった30日。その短い一生のうちに、これほど濃密な時間が流れたとは・・・。その壮絶な生き様は、下手な小説より遥かに感動的です。
ちなみに本文中では“疾風のマリア”と呼ばれているのに、タイトルは“風の中のマリア”。でもこれ、読んでるときはまさしく“疾風のマリア”で、読み終ったあとの余韻では“風の中のマリア”がぴったりの表現。このあたりも上手いなぁ、と思います。