可換環のクラスを与える基本的な性質:「単項イデアル整域ならば素元分解整域である」
いくつか有名な証明があると思うけれども、別証明を追補していく感じで。
(証明) RをPIDとする。PIDの既約元は素元である(*)から、とくに単元でないRの元a(a≠0)が有限個の既約元で表せることを示す。背理法による:
 Rの単元でない元a(a≠0)が有限個の既約元で表せないとする。
a は単元でないa_1,a’_1を以って、a=a_1・a’_1と表せて、仮定よりa_1,a’_1の少なくとも一方は既約ではない。a_1のほうが既約で はないとして、また単元でないa_2,a’_2をもってa_1 = a_2・a’_2 と表せるが、a_2,a’_2の少なくとも一方は既約ではない。このようにaを分解しつづけると、イデアルの真の増大列:
 (a) ⊂ (a_1) ⊂ (a_2) ⊂ … ⊂ (1) が得られる。(**)

和集合∪[n≧0](a_n) (ただしa_0=a)(***) はまたイデアルで、とくに単項イデアルだからあるbをもってb=∪(a_n)と表せる。先ほどの増大列の中にb∈(a_s)となるa_sがある。
すると(b)=(a_s)=(a_{s+1})=… となるから、真の増大列であることに矛盾(元aの話に換言すれば、aの分解があるa_sで有限回で停留すると)。

* この主張自体は簡単に示せるのでスルーします。
** ここで真に増大する無限列が得られるからPIDであることに矛盾している、とも言える。
*** 増大列にある(1)以外のイデアルの和集合ね。