独立行政法人「水資源機構」(さいたま市)が福岡県朝倉市に計画中の小石原川ダム建設の影響で、世界で唯一、同市の黄金(こがね)川だけに自生する絶滅危惧(きぐ)種のラン藻類「スイゼンジノリ」が壊滅的打撃を受ける恐れがあることが、北陸先端科学技術大学院大学(石川県能美市)の調査で分かった。スイゼンジノリの成分の「サクラン」は、1グラムで6リットルの水を吸収する性質やレアメタル(希少金属)の優れた吸着能力があり、資源回収や医薬品への応用が期待される。同大の研究者は、計画の見直しや環境影響評価(アセスメント)の実施を求めている。

■石川の大学調査 計画見直し求める

 水資源機構の計画は、小石原川に県内最大級のダムを建設するほか、黄金川の水源の1つとみられる佐田川と小石原川を2本の導水トンネルで結んで相互に送水する。

 黄金川は全長約2キロで、地元では佐田川の伏流水(地下水)が水源と考えられてきた。1978年に佐田川に寺内ダムが完成すると、黄金川の水量が急減し、スイゼンジノリの生産量も大幅に減少。このため、地元住民は2001年、小石原川ダムの建設計画に当たり、環境アセスで黄金川への影響を調べるように要請したが、水資源機構は「佐田川から黄金川への伏流浸透傾向は認められず、事業の影響を受ける地域に該当しない」としてアセスの対象から外していた。

 同大の調査は昨年6月、金子達雄准教授(天然物化学)のグループが実施。日本の土壌にはほぼ存在せず、環境に無害な希少金属インジウムの水溶液を佐田川上流に投入し、約2キロ離れた黄金川で検出されるか確かめたところ、実験前は4。3ppbだった黄金川のインジウム濃度が24時間後に37・8ppbに急上昇し、さらに12時間後には元に戻ったという。

 金子准教授は「佐田川の伏流水が黄金川の水源と実証された。スイゼンジノリは水量や水質に非常に敏感。ダム建設で水量が減ったり、他の川の水が引き込まれたりすれば絶滅する恐れが強い」と指摘する。

 これに対し、水資源機構小石原川ダム建設所は「伏流水の流れが証明されたとしても、水量までは分からない。黄金川の水源は雨による地下水の方が多いはずでダム建設の影響はない」と主張。

 朝倉市の塚本勝人市長は「金子准教授から詳しく話を聞いた上で、必要があれば、計画が黄金川に影響を及ぼす可能性について機構に調査を求めたい」と話している。

■スイゼンジノリ

 日本固有のラン藻類で単細胞生物。江戸時代から高級食材として珍重され、秋月藩が将軍家へ献上。藩の財政を支えたことから産地に「黄金川」の名が付いた。1872年にオランダの植物学者が世界に紹介。かつては熊本市の江津湖でも自生し天然記念物に指定されていたが、水質悪化と水量減少で1997年以降にほぼ絶滅した。環境省のレッドリストで最も絶滅の恐れが強い「絶滅危惧(きぐ)1A類」に分類。黄金川での収穫量は最盛期に年間約200トンあったが、現在は約40トン。