諫早湾でタイラギの不漁が続き、養殖アサリにも甚大な被害が出ているのは国営諫早湾干拓事業が原因として、長崎県諫早市小長井町と佐賀県太良町大浦の漁業者が五月、国を相手に、潮受け堤防排水門の常時開門と損害賠償を求める訴訟を長崎地裁に起こす。

 同湾内の漁業者が諫干事業をめぐり提訴するのは初めて。原告は七十人規模が目標だが、現時点では両町の漁協組合員五十五人ほど。太良町の大浦公民館で十一日、結成集会を開き、原告団長にタイラギ漁業者でつくる新泉水海潜水器組合の松永秀則組合長(54)=小長井町=を選出した。

 原告弁護団は、排水門を開門し堤防内の調整池に海水を入れることが「漁業再生への道筋」と指摘。潮流の戻りや赤潮問題について「七割方回復する」との研究者見解を挙げた。淡水化された調整池に海水が入れば農業用水に利用できなくなるが、「そもそもアオコが発生していて用水には使えず、別の取水法を考えればいい。結果的に、農漁業の共生につながる」との考えを示した。

 損害賠償については、地元漁協と国側が結んだ漁業補償契約で「湾内の被害二割程度」「事業終了後は元の漁が可能」-とした条件を問題視。「国が承知の上で漁民をだましたか、(深刻な被害が)起きることを予測すべきだった。元の漁ができるよう回復させる義務がある」とし、「湾内と近傍の漁業者は直接の被害者。事業との因果関係は明確」と主張。賠償を求める具体的な期間と額は今後、算定する。

 諫早湾での漁業は、堤防工事が本格化した一九九三年以降、タイラギの不漁が続き、十五年連続で休漁状態。赤潮や海水の貧酸素が原因とされる養殖アサリの大量死も起きている。