諫早湾干拓事業による造成農地の中央、小江両干拓地(農地面積計六百七十二ヘクタール)で一日、本格的な営農が始まった。巨大公共事業の在り方や環境問題などをめぐり紆余(うよ)曲折をたどった諫干農地。栽培に環境農法を積極採用した「農業の先進地」(県)との狙いも併せ、入植者は新たな産地に期待を寄せた。

 両干拓地には、計四十二の個人や農業生産法人が入植。全入植者が化学肥料などを低減する生産技術を導入するエコファーマー(認定農業者)の認証取得者。ジャガイモやタマネギなどの露地野菜を中心に、施設園芸や飼料作物の植え付けなどを行う。

 南島原市南有馬町の匠集団おおぞら(荒木隆太郎社長)は同日、現地で地鎮祭を行い、トマトなどを栽培するビニールハウスの設置に着手。生協が主要取引先で、荒木登司郎取締役は「諫干農地はミネラル分が多く、地力がある。野菜の味もいい」と期待。今月中旬から露地物のキュウリ、ピーマンの定植を始めるが「流通先からは『ニンニクも栽培できないか』とのオファーもある」と話した。

 県は、大規模農地をリース方式で貸し付け、環境保全型農業を推進する取り組みについて「全国に類を見ない手法。新たな産地形成を含め日本農業のモデルになりうる」とし、「調整池の水質保全など総合的な農業・環境技術を早急に確立し、想定外の問題にも対処していきたい」とした。

◆「排水門開門を」 漁業者ら抗議集会やデモ

 「排水門を開門し、宝の海を再生せよ」-。諫早湾干拓事業の造成農地で本格的な営農が始まった一日、諫干事業の見直しを求める市民団体や有明海沿岸の漁業者ら約五十人が、現地の南部排水門付近で抗議集会を開き、堤防道路を行進した。

 集会では「沿岸漁業・地元農業どちらも大事」とした上で、「干潟の浄化能力と魚介類の産卵場を回復させるには、調整池に海水を導入すべきだ」と主張。ノリ養殖業に三十年以上かかわってきた島原市有明漁協の篠塚光信さん(49)は「調整池からの排水の水質が悪く、ヘドロまじり。一昨年からノリが育たなくなった」と現状を訴えた。

 ▽有害なアオコが発生する調整池の用水を利用すれば、干拓地での農産物の食の安全性は失墜する▽知事、農水政務官の親族企業への不当な農地配分を撤回せよ-などを盛り込んだ集会宣言文も採択した。