常識ハズレの中国ビジネス指南(4)-遠藤誠
経済産業省中国経済産業局主催の「水環境ビジネスシンポジウムin広島-中国地域の技術でアジアの水をきれいに」が、2月29日(金)に「ホテルセンチュリー21広島」で行われる。そのプログラムにパネルディスカション「中国地域の水環境修復技術のアジア展開を目指して」があり、私もパネリストとして参加して、中国環境問題の現状と環境ビジネス分野における日本企業のアプローチ方法について解説することになっている。中国の環境ビジネスに関心のある方には足を運んでいただきたいのだが(入場無料)、今回はそこで発表予定のサワリの部分を以下に紹介したい。
◆中国水環境の現状
07年12月、中国における水環境ビジネスの可能性を探るため、北京と上海を調査してきた。環境分野に関連する政府機関や日系企業のヒアリングを通して見えてきたことは、中国の水質汚染は予想していたよりはるかに深刻であることだ。その深刻さは国全体の経済成長や人々の日常生活にも大きな影響を与えるほどで、すでに限界に近づいているといってもいい。たしかに中国はこの10年ほどで飛躍的な経済発展を遂げた。しかしその反動、ツケは、地域格差や食品の安全のみならず、人が生きていくために絶対必要な水の安全にまで影響を及ぼしているのである。今後、中国政府は水環境改善のために莫大な資金と技術を投入せざるを得ないところまで追い詰められているといっていいだろう。
また中国の環境汚染が直接日本に影響を与えることはご存知のとおりだ。水環境についても同様で、近年はとくに工場排水、廃棄物等による海洋汚染やエチゼンクラゲの大量発生など、日本の水環境や漁業への影響が深刻化している。日本にとっても他人事ではないのである。
今年オリンピックが開催される北京。ここでも水に関する問題は深刻だ。中国環境保護産業協会によると、北京の78本の河川のうち56本は、飲料水として適さない汚染レベルだという。これまでに汚染の発生源になっている問題工場を4万社ほど閉鎖させてきたようだが、08年は汚水処理場では1日当り2400トンのヘドロが発生、年間80万トンになると予想されていることから、その無害化処理は緊急の課題になっている。さらに北京を含む中国北方は、汚染のほかに、絶対的な水量が不足しているという問題も抱えている。南水北調(南方の長江の水を西北、華北まで導水する)プロジェクトという大規模な灌漑工事が進められている所以だが、水を浄化するとともに量も確保し得る技術が求められているのである。
一方、上海は北京と違って、基本的に水量は豊富だ。しかし水質の汚染はやはり深刻で、昨年5月には、上海近郊の観光地である江蘇省無錫市の太湖でアオコが異常発生したために100万戸の家庭で水道水が飲めなるという騒ぎがあった。こうした淡水湖における富栄養化問題は深刻になる一方で、上海地域のどの湖沼、ダム、河川でも発生する可能性があるという。
◆瀬戸内海の知恵
ところで、日本の中国地方には、瀬戸内海という閉鎖性海域がある。日本を代表する美しい景色と澄んだ海で知られるが、実は30-40年ほど前の高度経済成長時代には汚染が進み、その改善が大きな課題だった。そこで「水質汚濁防止法」や「瀬戸内海環境保全特別措置法」などによる排水規制が行われ、さらに中国地方の産業界による水環境修復のための努力が重ねられたのである。その結果、瀬戸内海は見事に甦ったわけだが、瀬戸内にはこのときから蓄積されてきた水環境修復に関する高い技術力と知恵がある。
実は経済産業省の中国経済産業局では、この高い技術力を活用した環境産業を創出するために循環・環境型社会形成プロジェクトを実施中だ。その一環として「中国地域の水質浄化技術のアジア展開可能性調査」が検討され、その対象国の一つに中国が選ばれている。私はその検討委員会のメンバーとして中国を担当することになったが、日本企業が進出するためには課題も多いことが分かった。
欧米企業は国を挙げて補助金も出しながら環境関連企業を中国に送り込んでおり、中国の環境改善ビジネスに積極的だ。ところが水環境分野で実用的な改善技術を有している日本企業の進出は少ない。整理すると次のような問題を抱えているからである。
(1)情報収集と交流の不足。
(2)海外で活動するための初期投資資金不足。
(3)技術流出を恐れ、技術移転に消極的。
(4)中国での経営と現地人材の活用に不慣れ。
中国側からのヒアリングによると、日本企業は技術力は高いが、中国に適用できる技術かどうかを見極めているうちに、技術流出を恐れて途中で引き上げてしまうケースが多いという。したがって、日本企業の知的財産権をどのように保護・サポートしていくかが、今後の中国進出の最大の課題だと考えていいのである。「水環境ビジネスシンポジウムin広島」では、その具体的な方策を発表するつもりだ。
経済産業省中国経済産業局主催の「水環境ビジネスシンポジウムin広島-中国地域の技術でアジアの水をきれいに」が、2月29日(金)に「ホテルセンチュリー21広島」で行われる。そのプログラムにパネルディスカション「中国地域の水環境修復技術のアジア展開を目指して」があり、私もパネリストとして参加して、中国環境問題の現状と環境ビジネス分野における日本企業のアプローチ方法について解説することになっている。中国の環境ビジネスに関心のある方には足を運んでいただきたいのだが(入場無料)、今回はそこで発表予定のサワリの部分を以下に紹介したい。
◆中国水環境の現状
07年12月、中国における水環境ビジネスの可能性を探るため、北京と上海を調査してきた。環境分野に関連する政府機関や日系企業のヒアリングを通して見えてきたことは、中国の水質汚染は予想していたよりはるかに深刻であることだ。その深刻さは国全体の経済成長や人々の日常生活にも大きな影響を与えるほどで、すでに限界に近づいているといってもいい。たしかに中国はこの10年ほどで飛躍的な経済発展を遂げた。しかしその反動、ツケは、地域格差や食品の安全のみならず、人が生きていくために絶対必要な水の安全にまで影響を及ぼしているのである。今後、中国政府は水環境改善のために莫大な資金と技術を投入せざるを得ないところまで追い詰められているといっていいだろう。
また中国の環境汚染が直接日本に影響を与えることはご存知のとおりだ。水環境についても同様で、近年はとくに工場排水、廃棄物等による海洋汚染やエチゼンクラゲの大量発生など、日本の水環境や漁業への影響が深刻化している。日本にとっても他人事ではないのである。
今年オリンピックが開催される北京。ここでも水に関する問題は深刻だ。中国環境保護産業協会によると、北京の78本の河川のうち56本は、飲料水として適さない汚染レベルだという。これまでに汚染の発生源になっている問題工場を4万社ほど閉鎖させてきたようだが、08年は汚水処理場では1日当り2400トンのヘドロが発生、年間80万トンになると予想されていることから、その無害化処理は緊急の課題になっている。さらに北京を含む中国北方は、汚染のほかに、絶対的な水量が不足しているという問題も抱えている。南水北調(南方の長江の水を西北、華北まで導水する)プロジェクトという大規模な灌漑工事が進められている所以だが、水を浄化するとともに量も確保し得る技術が求められているのである。
一方、上海は北京と違って、基本的に水量は豊富だ。しかし水質の汚染はやはり深刻で、昨年5月には、上海近郊の観光地である江蘇省無錫市の太湖でアオコが異常発生したために100万戸の家庭で水道水が飲めなるという騒ぎがあった。こうした淡水湖における富栄養化問題は深刻になる一方で、上海地域のどの湖沼、ダム、河川でも発生する可能性があるという。
◆瀬戸内海の知恵
ところで、日本の中国地方には、瀬戸内海という閉鎖性海域がある。日本を代表する美しい景色と澄んだ海で知られるが、実は30-40年ほど前の高度経済成長時代には汚染が進み、その改善が大きな課題だった。そこで「水質汚濁防止法」や「瀬戸内海環境保全特別措置法」などによる排水規制が行われ、さらに中国地方の産業界による水環境修復のための努力が重ねられたのである。その結果、瀬戸内海は見事に甦ったわけだが、瀬戸内にはこのときから蓄積されてきた水環境修復に関する高い技術力と知恵がある。
実は経済産業省の中国経済産業局では、この高い技術力を活用した環境産業を創出するために循環・環境型社会形成プロジェクトを実施中だ。その一環として「中国地域の水質浄化技術のアジア展開可能性調査」が検討され、その対象国の一つに中国が選ばれている。私はその検討委員会のメンバーとして中国を担当することになったが、日本企業が進出するためには課題も多いことが分かった。
欧米企業は国を挙げて補助金も出しながら環境関連企業を中国に送り込んでおり、中国の環境改善ビジネスに積極的だ。ところが水環境分野で実用的な改善技術を有している日本企業の進出は少ない。整理すると次のような問題を抱えているからである。
(1)情報収集と交流の不足。
(2)海外で活動するための初期投資資金不足。
(3)技術流出を恐れ、技術移転に消極的。
(4)中国での経営と現地人材の活用に不慣れ。
中国側からのヒアリングによると、日本企業は技術力は高いが、中国に適用できる技術かどうかを見極めているうちに、技術流出を恐れて途中で引き上げてしまうケースが多いという。したがって、日本企業の知的財産権をどのように保護・サポートしていくかが、今後の中国進出の最大の課題だと考えていいのである。「水環境ビジネスシンポジウムin広島」では、その具体的な方策を発表するつもりだ。