「東の壁を壊して、西の壁を補う」方式では解決しない中国の水質汚染 中国の大河、長江(揚子江)の水量は黄河の十数倍もあるが、水環境容量には限界がある。2004年、長江への汚水排出量は全国の汚水総排出量の41%以上を占めた。中国各地で他の河川から長江へ水を流入させることで、水質汚染を解消しようとするケースが相次いでおり、長江の水質環境の悪化が加速するのは必至である。 今年の5月以来、湖や河川の水質悪化に対する警報が相次いでいるのをうけ、先日、温家宝首相は太湖における汚染の管理状況を視察するために江蘇省無錫市を訪れ、太湖、巣湖(安徽省)、テン(=さんずいに「真」)池(雲南省)の水質管理に関わる座談会を開催した。 無錫では太湖がアオコに汚染され、水道水が異臭を放ったため水の使用が不可能になった。水利部は早急に長江から数億トンもの水を太湖に引き入れ、その結果、太湖・貢湖水域の水質は明らかに改善した。 6月には巣湖でもアオコが大発生する兆しが見られ、水が緑色のペンキのようにドロドロになり、不安が高まった。この時も、現地の水利部門は6月25日鳳凰頚水利センターの水門を開放し、長江の水が100km近い川を経て勢いよく巣湖へと流れ込んだ。3日後、関係部門は巣湖の東半分の湖水はほぼ長江の水と入れ替わり、水質は明らかに改善されたと発表した。 アオコが消え、水質が改善されたことは、喜ぶべきことだ。しかし、水質汚染の度に水資源調達プロジェクトに頼って危機を解消していることは憂慮せざるを得ない。 まず、水を引き込むことで汚染物質を押し流す方法は、決して根本的な解決策とはいえない。大量の水を引き入れることで流動性が増し、水の自浄作用が若干高まる以外には、汚染物質を希釈させる役割を果たすに過ぎない。その役割はむしろトイレの水を流すのに似ている。汚染物質を下水道に流すだけで、汚染物質を除去することはできない。 水門を開いて放水することで汚染物質を川下に押し流すことはできても、これらの物質には変化がないばかりか、除去することもできない。効果的に汚染を管理することはできず、汚染物質は下流の水質に悪影響を与える。 確かに水門を開いて水を大量に引き込めば、水中の汚染物質の濃度は一時的に低下するが、資金を投入して工業、農業及び生活のそれぞれの領域における汚染源を管理する方法を考え出す努力を怠れば、新たな汚染物質が絶えず湖や河川に流入することになる。これらの汚染物質は水中に残存するか、水底の泥の中に堆積する。さまざまな自然条件が重なれば、水源地の水質は再び急激に悪化し、また大量の水を投入せざるを得なくなる危険は免れない。 例えば、2006年9月8日、湖南省岳陽県城で飲用水源地である川の水質汚染事件が発生した。現地政府は通常の制御方法に従って、川の上流から大量に水を引いて汚染を緩和させたが、2日後、取水口のヒ素の濃度は依然として高いままであった。更なる調査の結果、大量のヒ素汚染物質が川底の泥に堆積しており、水を投入した際の勢いで、その泥の中に長年にわたって堆積されていたヒ素汚染物質が、水中に放出されたことが分かった。 水を投入して汚染物質を押し流すことは実際には水環境容量の転移、つまり汚染物質のたらい回しであり、水の調達先となる地区の水質環境にも同様に悪影響を及ぼす。近年、黄河の水質が悪化し続けている。これには、流域で汚染物質の排出が増加していることはもちろん、上流、中流、下流の引黄プロジェクト(黄河の水を他の水源に引き込む計画)によって黄河の水資源が大量に流出していることも、重要な原因となっている。 また、水資源調達プロジェクトによって環境及び社会が払う大きな犠牲を無視することはできない。例えば、雲南省ではここ数年来、テン中水資源調達プロジェクトの計画を練っており、虎跳峡にダムを建設する予定で、400kmの運河を建設している。毎年、金沙江から25億トンの水を昆明、楚雄、大理等の都市に送ることで、水の供給量を増やし、テン池等の高原に位置する湖の深刻な汚染を緩和させることができる。しかし、このプロジェクトによって10万人近くが移住を余儀なくされ、現地の自然や文化遺産に取り返しのつかない損害を与えることが予測されている。 水を引き込んで汚染を解決する方法は一時的な対策にすぎず、水質汚染を管理する万能薬では決してない。全ての都市が川を下水道のように扱うことになれば、川・湖・海はいつか汚染処理タンクになってしまうだろう。水を引き込む解決方法によって一時的な成果を挙げている間に、汚染源のコントロールに力を入れて初めて、根本的な汚染解決につながるのである。