私達の体で脳神経細胞と心臓の筋肉の細胞だけは複製(再生)をしません。脳神経細胞と心臓の筋肉の細胞は生まれた時の数が最大で、それ以上に増えることはありません。もちろん、個々の細胞は成長に伴って大きくはなり、機能も増大しますが、数は減っていく一方で、これらの細胞は、酸素が不足したり、栄養分が足りなかったりなあどの理由で死んでしまうと、他の細胞のように修復することはなく、減った細胞を補うことはできません。
体の中で特に大事な脳神経細胞と心臓の筋肉を構成している細胞は、増殖されないわけですから、死なないために絶えずフレッシュな酸素と栄養を必要としているわけです。たとえば、数分の間、心臓が止まって血液を全身に送り出すことを休んでしまうと、血液は新しい酸素を脳にはこぶことができなくなり、それだけのことで脳神経細胞は死んでしまいます。なぜなら、酸素は血液の中にある赤血球によって全身に運搬されているからです。脳内出血などで、部分的に脳内への血液の輸送にトラブルが起きると半身不随になったりする話はよく聞くことです。運動機能は予備の神経を使って新たに訓練をすることもできますので、ある程度は回復できることもあるようですが、脳神経細胞がおこなっている思考であるとか、言語であるとかの人間らしさとしての能力などは、現在「今」の状態がベストということになるのです。今、機能しえる脳神経細胞を全部をフル回転させて(実際には不可能ですが)、人間としての英知を最高に引き出して活動している人がいたら、今がベストということになるのだと思います。
肝臓は文句を言わない臓器
体の中で唯一、細胞が異常や苦しみを人間に伝えない臓器があります。沈黙の臓器と言われている肝臓がそれです。肝臓は、放射線には比較的強い臓器ですが、体にとって、お酒や薬など、もともと体に存在していない物を異物、すなわち毒物として認識し、これらの毒物の解毒を一手に引き受けることになります。この論法からすると、薬もそれ自体はもちろん毒物と言うことになります。薬を飲むのは、毒を持って毒を制することに他なりません。しかし、この毒物(薬)の解毒作用を受け持っている肝臓にとっては大変な負担になることはいう真麻でもありません。化学工場である肝臓は、自分自身の細胞が薬などで一部破壊されても、それを補修することができます。この能力の限界内で、肝臓の細胞はいつも様々な難問を解決し、生命機構が維持されているのです。
次のような興味深い話があります。
肝臓学会のデータによると、日本酒を毎日4合以上15年間以上続けると、全ての人が肝硬変になります。
とっくり1本の日本酒に含まれるアルコールを肝臓が処理する時間は、およそ3時間と言われています。3本飲めば9時間必要です。皆さんがぐっすり寝ている間中、肝臓はせっせとアルコールを分解するために働き続けることになり、休憩時間を与えてもらえない肝臓の細胞たちは大変です。
(肝臓入門講座 ミノファーゲン製薬より)