医療では、体の中に自然に存在するこのカリウム40を利用して病気の診断をすることができます。
人が成長して体重が増えて来るとともに、体内のカリウム40の量も増えてきます。筋肉の発達にともなってカリウム40も増えるからです。カリウム40と筋肉の活力との間には、おおいに関係があるのです。
ところが、進行性の筋ジストロフィー症のように、筋肉が退化していくような病気の場合は、このカリウム40の量が増加せず、逆に少なくなっていきます。このことは、カリウム40から出て来る放射線の量を体外から測定することによって判ります。カリウム40の量が減ってきてしまうのは、その人の体にカリウム40を取り込む能力がなくなっている、すなわち、筋ジストロフィー症であることを診断する助けになるわけです。私達の体の中に自然に付与された放射性物質が、このような形で医療に役立っている例です。放射線や放射能は、人類の歴史の開幕以前から地球に存在し、以来ずっと私達と共存しているのです。
【Yoshiのつぶやき】
よく考えれば当然のことですが、放射性同位元素がビッグバンと同時に生成し今日に至っているということは、面白いことです。
目の前に、高層ビルが建っています。ずいぶんしっかりして見えます。ところが、陽子(?)の目で見ると、実は、スカスカしています。原子核の周りを先の図のように、ずいぶん離れて電子がまわっているので、原子自体は大きく見えるのですが実はスカスカだという話です。
野球のボールくらいに、濃く、凝縮された宇宙が、ビッグバンで爆発しました。ビッグバンです。人間が、かって到達したことのない高温・高圧なので、そこで何が起きるかよく判りません。それで、陽子や、中性子や色々な物同志を光速近くでお互いにぶっつけて高温を発生させ何が起きるか調べます。
上図は、米国東海岸のブルックヘブン研究所のRHIC(Relative Heavy Ion Collider:重イオン衝突型加速器)です。
この設備で、4兆°K高温が達成されたと言われています。
先のビッグバンですが、目の前に首都圏のビルが並んでいます。ずいぶん立派に見えますが、今日話題の原子も目でみると、実はずいぶんスカスカの空間のようです。放射線を学ぶにあたって、地球の生い立ちについて調べましょう。
野球ボールぐらいに凝縮された宇宙がブラックホールに取り込まれ、ビッグバンで超高温の下に置かれ、バラバラの素粒子のスープに変わりました。その後の展開ですが、
最初の0秒から5.4x10-44秒の、短い短い、空白を経て膨張し、最初の超高温から1032 °Kに低下しました。
続いて 10-38-10-36秒後に、温度が1028-10-29Kに下がると色々な素粒子が生まれました。
次に10-6秒後(100万分の1秒後)に、温度が1013 °K(10C)に下がると、素粒子クォークとグルーオンが生まれ、
宇宙誕生後1万分の1秒後には宇宙の温度は2兆°Kまで下がり、この温度ではクォークは単独では存在できず、2個づつ結合して中間子が、3個づつ結合して陽子、中性子などの核子が生じます。
元素の原子核合成が始まるのは、宇宙発生後の約14秒後で、まず、最初は陽子と中性子の核融合が始まり、3分を過ぎると三重水素やヘリウム3の原子核ができます。(この辺り京極一樹「宇宙と素粒子のしくみ」参照)
ここまでで、原子核はできたが、原子は一つもできていない。原子核の周りに、電子を取り込んで、水素・ヘリウムが完成するが、宇宙は今なお超高温の火の玉状態で、電子は自由に飛び回っている。宇宙はまだすさまじい速度で膨張しどんどん温度が下がって来る。
やがて、水素の原子ができ、ヘリウムができ、三重水素もこの時ときできました。ここまでは、宇宙は大きな火の玉原子炉で、まばらな濃度の粒子の集合体であるが、やがて、いくつかの大小のグループに分かれ、いくつかの核融合反応器になる。ここで、星の大きさが決まり、その星の性質も、べつの言い方をすると、そこから出る放射線も決まってしまう。
このあたりで、宇宙の見通しが明るくなる。
周期律表を思い起こしてほしい。一番軽い水素から、ヘリウムまででき、続いて鉄までの原子が出来上がる。我々の地球の飛んでくる放射線は、地球自身からの放射線、他の星から来る放射線を併せ先に示したようになる。