宇宙の起源についての議論の前に、膨張の最初の段階について触れましょう。+控え目に見積もったとしても、宇宙は最初の10-35秒の間に、1030倍に膨れ上がったとされています。こては、直径1センチのコインが一瞬にして銀河の大きさの1,000万倍に大きくなったことに相当します。このことは、いかなるものみ光より速い速度で動けないという相対性理論に反するように思われますが、空間それ自体の膨張に対しては速度の上限は適用できないのです。

一般相対性理論を越えて量子論を考える試みはビッグバンを予測しましたが、この理論によると、膨張は完全には一様ではないであろうと考えられています。この一様性からのずれは、宇宙マイクロ波背景放射の異なる方向の温度にわずかな変化をもたらします。この様な変化はあまりにも小さく1960年までは観測されていませんでしたが、1962年にNASAのCOBE衛星によって初めて発見され、その後、COBE衛星の後継機として2001年に打ち上げられたWMAP衛星によって測定されました。この計測によって私たちは宇宙の膨張が実際に起こったと確信しているのです。

皮肉なことに、宇宙マイクロ波背景放射の小さな変化が宇宙の膨張の証拠となったにもかか+わらず、

宇宙膨張が重要であると考えられる理由は、宇宙マイクロ波背景放射の温度がほとんど一様であるという事実から来ています。ある物体の一部をその周りよりも温めたとしましょう。しばらく待つと、物体の温度が一様になるまで温められた部分の温度が下がり、その周囲は温められます。宇宙も最終的には一様な温度に落ち着くと考えられていますが、熱の伝搬する速度は光の速度を超えることはないため、この過程が進むには時間がかかり、すべての領域一様な温度にはならなかったでしょう。

 宇宙膨張は、一般相対性理論に基づく従来のビッグバン理論から予言される膨張よりもずっと爆発的な膨張があったと主張する点で、すくなくともビッグバンの「バン」を説明することが言えます。

Yoshiのつぶやき】

一般相対性理論と量子論は、重力まで考慮できるまで完成していないため、ビッグバンの初期の宇宙が分子や原子規模の大きさの物質で埋め尽くされていた時期を語るに不十分だと言う。

重力が空間と時間をゆがめる理屈を知ることが必要だ。



B

宇宙を平坦なビリヤード台に見立ててみます。台の表面は、少なくとも2次元の方向にわたって平坦な空間です。もし球を台の上で転がしたら、それは直線に沿って動きます。しかし、もしこの台がゆがんだり、くぼんだりしていたら、球は曲がって転がるでしょう。この例では、曲がり方が台の外の3つ目の次元に描かれているので、どのようにビリヤード台がゆがんでいるか容易に見て取ることができます。それに比べて、私たちは私たちの住む時空の外に出ることができないので、私たちの宇宙において時空がどのようにゆがんでいるかを想像するのは容易でありません。

時間の始まりについての議論は、世界の端についての議論に少し似ています。もし、ある人が世界は平坦な平面であると考えていたとすると、その人は海水がっその世界の端から流れ出ていないのかどうか疑問を持つかもしれません。このことは検証することができます。つまり、地球を一周して端から落ちなかったことを確かめればいいのです。しかし、時間は線路の模型のようなものです。もしそれに始まりがあったならば,汽車を走らせるような何者かーつまり神が存在していなければなりません。アインシュタインの一般相対性理論は空間と時間を時空として統合し、時間と空間が混合するという概念を盛り込みましたが、それでも時間と空間とは別なものとして扱われ、始まりと終わりがあるか、永遠に続くかのいずれかでした。しかし、量子論の効果を一般相対性理論に加えると、ある極端な場合において大規模なゆがみが生じ、時間がもう一つの空間次元として振る舞うようになるのです。宇宙が一般相対性理論と量子理論の両方に支配されるほど小さいような初期の時代では実際上の空間次元は4つあり、時間次元は存在しませんでした。

時間を空間のもう一つの方向であると見なすことは、世界の端を取り除いたのと同様に、時間が始まりを持つという問題を免れるということを意味します。


地球 7

宇宙の始まりを地球の南極に、緯度を時間に見立ててみます等緯度の円を宇宙の大きさに見立てれば、それは北に移動するにつれて膨張していきます。宇宙は南極において点かあら始まるわけですが、その南極は他のいかなる点とも同じようなただの点に過ぎません。南極より南には何もないので、宇宙の始まりの前に何が起こったのかは意味をなさなくなあります。この描像では時空は境界を持ちません。つまり、南極では他の場所と同じ自然法則が成り立ちます。

これと同様に、一般相対性理論と量子論を組み合わせると、宇宙の始まりの前に何が起こったかという疑問は意味を持たなくなります。何世紀にもわたって、アリストテレスをはじめ多くの人々は、宇宙がどのように構成されたかとの議論を避けるため、宇宙は常に存在すると信じてきましたが、時間が空間のように振る舞うと理解することは新たな代案をもたらします。宇宙の始まりは科学の法則によって支配されており何等かの神によって動かしてもらう必要もないということを意味します。


マイクロ波

上の図はマイクロ波背景放射によって表される全天図です。これは宇宙に存在するすべての構造の写真です。つまり、137億年前のビッグバンのとき発生したゆらぎがマイクロ波背景放射として写し出されたものです。この中に地球も一つの点として表されていることになります。地球に特徴があるか否かの判断はブログフォロアー諸氏のお任せするとしても、この中の点が137億年の後に現在の地球となっていることに

驚きを持たれると思います。

  ある時点で系の状態が与えて、物理法則を用いてその後の状態を計算する方法をボトムアップ的アプローチとよび、もう1つの、現在の状態から遡って過去を知る方法をトップダウン的アプローチと呼ぶことにしましょう。

Yoshiのつぶやき】ホーキングは、まず観測し、結果によって将来を知るトップダウン的アプローチを重視しているように思います。 

  宇宙のみかけの次元について触れましょう。M理論によれば、時空は10個の空間次元と1個の時間次元と持つとされています。このうち7つの空間次元は私たちが感知できないほど小さく畳み込まれ、私たちになじみのある3つの巨大な次元だけが残されるというアイデアです。M理論の主な未解決問題の1つとして、「なぜ、私たちの宇宙には3つの巨大次元の他に巨大次元はないのか?」というのがあります。

【Yoshiのつぶやき】3つの巨大次元のみを考えていたのでは、どこからも重力は出てきません。畳み込まれた残りの次元に重力の秘密があるのではなかろうか?

畳み込まれた次元について考えましょう。M理論では畳み込まれた次元の内部空間の形状が、電子の電荷のような物理定数の値と素粒子の間に働く相互作用、すなわち自然界の力の性質を決定してしまうことです。

数百年前には、人々は地球が唯一の存在であり、宇宙の中心に位置すると考えていました。今や、私たちは銀河に数千億の星々が存在し、その銀河も数千億存在し、その星々の多くが惑星系を持っていることを知っています。私たちの宇宙もまた数多くの宇宙の中の1つであり、その見かけ上の法則は1つだあけに定まるものでないということが示

されました。

Yoshiのつぶやき】この時点で、ホーキングはM理論をあまり信用していないように思います。ここは結論を急がず先へ進みましょう。

(2014-1-18 Yoshi)