今世紀の始めまで絶対時間が信じられていた。しかし、全ての観測者にとって、彼がどんな運動をしていようと光速が同じに見えることが発見され、相対性理論が生み出され絶対時間などないことが認識された。時間は、其々の観測者がたずさえている時計で時間を測ればよく、別々の時間で構わない。時間はそれを測っている観測者にとって相対的な概念となった。

 次いで、重力と量子力学とを統一しようとすれば「虚時間」を導入する必要がでてきた。


Yoshiのブログ

Yoshiのつぶやき】砂時計は時間の概念を語る格好の材料である気がする。いったん下に落ちた砂は何もしなければ決して元に戻らない。でも簡単に元に戻す方法あある。砂時計をひっくり返せばよい。宇宙は

ひっくり返すことのできるものか?

科学法則は、C,P,Tと呼ばれる対称性を繰り返し実施しても変化しない。Cは粒子と反粒子とを入れ替えることを意味し、Pは鏡像を作り右と左とを意味する。Tはすべての粒子の運動方向を逆にすることを意味する。これはつまり運動を後ろ向きにすることを意味する。科学法則がCPとの組み合わせによって変わらず、C,P及びTの組み合わせによっても変わらないとすれば、Tだけを加えた時にも不変の筈である。それなのに、普通の生活では実時間の前向きと後ろ向きの方向の間に大きな違いがある。砂時計から砂が落ちるところを撮影し、そのフィルムを逆回転すると砂時計は元に戻るが実世界ではそうは行かない。この状態を説明するのに我々は熱力学の第二法則を持ちだす。砂が砂時計の上にあって、整頓している時、エントロピーは最小の状態にある。小さい穴からこぼれ出、下の容器に落ちたとき、エントロピーは増大し、安定する。エントロピー増大の法則である。エントロピーが時間とともに増大することを時間の矢と呼ぶ。時間の矢には3つの異なるものがある。

1は、熱力学的な時間の矢、第2は心理学的な時間の矢、最後は宇宙論的な時間の矢である。

1,すでに説明した。第2は我々が時間を感じる方向であり、過去は覚えているが、未来は覚えておくことができない。第3は宇宙の時間であり、この時間の方向に宇宙は膨張する。

Yoshiのつぶやき】久しぶりにエントロピーについて考える機会を得た。最近エントロピーの中身が変わったらしい。この言い方は、正しくない。従来、といってもいつ頃までかしら、エントロピーとは熱力学の概念と思っていたら、今では熱力学、統計力学、情報理論で広く使われるらしい。その定義は「何をすることができて、何をすることができないかをその大小で表わすよう量」だそうな。Yoshiが始めて接したエントロピーは

dS = dQ/dTのイメージで「でたらめさの尺度」だ。この意味で、ホーキングの次の説明はいかにも判りやすい。「水を入れたコップがテーブルから落ちて床で砕けて散ったとしよう。通常、割れたコップがひとりでに集まってテーブルの上に飛び上がるのが見られないのは、熱力学の第二法則で禁止されているエンタルピーは時間とともに増大するからである。」

  古典的な一般相対性理論では宇宙がどのように始まったかは予測できない。ビッグバンの特異点では,既知の科学的法則がすべて破れるからである。重力の量子論ではこれまで見たように、宇宙の状態を特定するのに、宇宙の可能な経歴が、過去の時空の限界ではどのようになっていたかを示さなければならない。前回示した宇宙の図ではビッグバンの点から始まり、時間の矢に逆らって(虚時間に沿って)膨張し、しだいに大きくなる。だが宇宙が膨張を止め収縮し始めた時、どんなことが起きるのか、熱力学的な矢の向きが逆転し、無秩序な時間とともに減少するのだろうか? 割れたコップがひとりでに集まって床から離れテーブルの上に飛び上がるのだろうか? 何が起きるかを知るもっとも手早い方法がある。

ブラックホールに飛びこむことである。

ホーキング曰く、「私は間違いをでかしたことに気が付いた。収縮期の間も、ブラックホールの中でも、エントロピーは増大し、熱力学的および心理学的時間の矢は決して反転しないのである。」と。

  

要約すると、科学法則は時間の前向きと後向きの方向を区別しない。だが、少なくとも3種類の時間の矢があって、未来と過去を区別している。その3つの矢とは、無秩序の増大する時間の方向、すなわち熱力学的時間の矢、われわれが未来ではなく過去を覚えている方向、すなわち心理学的な時間の矢、そして、宇宙が収縮ではなく膨張していく時間の方向、すなわち宇宙論的時間の矢である。心理学的な矢は本質的に熱力学な矢と同じであり、この2本の矢はつねに同じ向きである。さらに、熱力学的時間の矢と宇宙論的理論の矢は一致すると想われる。なぜなら、膨張期にだけ、知的生命が存在するからである。

2013-10-19 Yoshi