ブラックホールという言葉の起源は新しい。この言葉はアメリカの科学者ジョン・フォイラーが1969年に作り出したものだ、200年まえからそのようなものがあると考えられてはいたが、深く追求されては来なかったらしい。現在では、天の川銀河の中心にあるイテ座Aには太陽の70万倍の質量を持った巨大ブラックホール

が存在すると多くの天文学者が考えており、1995年にはNGC4258銀河の中心に太陽質量の3,000万倍のブラックホールが有ると指定された(Wikipedia)けれども、ブラックホールがはっきりと観測された訳ではない。ブラックホールに取り込まれると光すらその中から出でこないというのがブラックホールの定義だからである。

  始めに、星のライフサイクルから話しを進めよう。星は大量の気体が重力で凝集し、崩壊し始める時に形成される。収縮するにつれて気体の原子は頻繁にそしてより大きな速度で衝突し合うようになり、熱せられていく。そしてついに水素同士が衝突する際跳ね返らず合体してヘリウムとなるほどに熱される。この反応は制御された水素爆弾のようなものだが、ここで放出される熱が星を輝かせるのである。この熱は、やがて気体の圧力を重力と釣り合うまで高め、気体は収縮を止める。核反応で生じる熱が重力と釣り合って星は長い間安定を保ち続ける。しかし最後には水素その他の核燃料を使い尽くす。星は燃料が尽きると冷え始めそれとともに収縮する。このような星に何が起きるか? それがやっと理解され始めたのは1920年代も末になってからである。

  1928年インドの大学院生チャンドラセガールはケンブリッジ大で学ぶためインドを出た。チャンドラセガールはどれだけの大きさの星なら燃料を使い果たした後でも重力対抗していけるかを計算してみた。計算の根拠は星が小さくなると、最後にパウリの排他原理によって重力に対抗しなければならなくなるとするもので、太陽の質量の1.5倍をもって自分自身の重さに耐えられる限界(チャンドラセガールの限界)とした。

  質量が太陽の1.5倍以下であれば星は最後に収斂を止め、取りうる最後の状態の一つである白色矮星となって落ち着くがその半径は数十マイルで、密度は数百トン/立方インチである。このような白色矮星は多数観測されている。ランダウは星の取りうる最後の状態がもう一つあることを指摘した。それは中性子星である。白色矮星に比べ小さく半径はわずか10マィルしかない。中性子星の存在予測された時は観測のすべはなかったが、1967年に発見され現在までに約1600個が発見されている。

  チャンドラセガールの限界を超える大きな星の最後について1939年アメリカのオッペンハイマーが重要な問題の解を得たが、第二次大戦がはじまり、議論は一時棚上げになった。1960年代になって、オッペンハイマーが研究を再開した。オッペンハイマーの研究から我々が描き出す宇宙は次のようなものである。

星の重力場は、蒔空内の光線の経路を星が存在しなかった場合の経路とは違ったものに変える。光円錐はその頂点から放たれた閃光が時間と空間の中で辿る経路を示すが、この光円錐も星の表面の近くでは、少し内側に曲げられる。このことは日食の間に観測される遠方の星の光が湾曲することから知ることができる。星が収縮するにつれてその表面の重力場も強くなり、光円錐はいっそう大きく内側に曲がることになる。このために光が星から脱出することはますます難しくなり、光は遠方にいる観測者にはより弱く、より赤く見えるようになる。そしてついに、星がある臨界半径以下に縮んでしまうと、重力場が極めて強くなり、光はもはや脱出できなく大きく光円錐を内部に曲げてしまう。(次頁図参照)


Yoshiのブログ-時空間

相対論によれば光より速く伝わるものはない。光が脱出できない以上何物も脱出できないことになる。すべてのものが重力場によって引き戻されるのである。

  ブラックホールの存在の可能性をさらに強めたのはケンブリッジ大の研究生ジョスリン・ベルだった。1967年のことである。電波パルスを規則的に発する天体の発見だった。最初は、銀河内の異星文明と接触したのではないかと思ったほどだった。彼は最初に見つかった4つの電波源をLGM1-4(小さい緑の人達)と呼んでいた。最後にあまりロマンティックではない「パルサー」と名付けられたこれらの星は実は回転する中性子星であって、その磁場は複雑な周囲の物質の相互作用で、電波パルスを放出していたのである。中性子星があるなら、ブラックホールもあるのではと多くの人が期待した。そんな中1983年にジョン・マイクルはブラックホールといえども周辺の星には重力を及ぼしている筈だと指摘した。

ブラックホールが見えた。

白鳥座x-1という星があり、強いX線源である。この星見えない相手の周りを回りながら重力で引き合っている。この星の表面から物質が吹き飛ばされ、見えない相手に向かって落下しながら螺旋運動を行い非常に熱くなってX線を放射する。下の図を見て頂こう。


Yoshiのブログ-BH

見える星は実際観測されている星である。白鳥座x-1が一例である。図でブラックホールとあるが、

見えない相手はブラックホールや、光の弱い白色矮星や、中性子星などそう大きくない星である。実際に白鳥座にブラックホールがあるかどうかは、いまだ結論を得るに至っていない。

  ところで、このようなブラックホールはどこに、どれくらいあるのか? 大変気になって来た。(Yoshi 注)

 

今では、ブラックホールが存在する証拠は、我が銀河やマゼラン星雲と呼ばれる隣のふたつの銀河にある白鳥座x-1に似た天体系の中にいくつか見つかっている。ところが、ブラックホールの数がそれよりはるかに多いのは確実である。宇宙の長い歴史の中にはその核燃料を燃やしつくして崩壊せざるをえなかった星が多数あったはずだ。ブラックホールの数が、わが銀河系だけでも1000個に達しようと見える星の数に比べてさえ多いということも十分ありうる。このように多数のブラックホールがあれば、その重量を計算にいれることでなぜわが銀河系がいま見られるような速さで回転しているか説明できるであろう。見える星の数だけでは、この速さは説明できないのである。わが銀河の中心に太陽のほぼ10万倍の質量のかなり大きなブラックホールがあることについてもいくつかの証拠がある。

これに似ているがはるかに大きな、太陽のほぼ1億倍もの質量をもつブラックホールがクエーサの中心にあると考えられている。クエーサが放つ巨大なエネルギーの源は、このようなスーパーヘビー級ブラックホールに落ち込む物質以外には考えられない。

Yoshi注:以上で書かれたことは大変恐ろしいことのような気がする。宇宙は核反応による巨大なエネルギーでブラックホールやビッグバンを繰り返しているが、今人類はこの恐ろしいエネルギー反応を、コントロールできないまま使い始めようとしているのではないかと思う。宇宙で日常的に起きていることを見れば、地球をあっという間に崩壊させることだってそんなに難しいことではないような気がする。】

2013-10-1 Yoshi