まつたけ 

随分昔の話だが、あるところで広中平祐先生の話を聞いた。長い話で、まつたけの話だけがはっきりと思いだされる。

 

子供の教育が話題だった。「昔は食うや食わずで、勉強どころではなかった。ここかしこで苦学の話を聞いた。だけど、昔の方がずっと勉強したような気がする。先生、どう思うか?」と誰かが聞いた。

 

ちなみに、広中先生は、数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞されている。現在まで日本人の受賞者は、3人だけである。もう一つ、広中先生の博士論文を審査されたのが、前の話の永田雅宣先生だ。お二人とも、日本の数学の巨匠である。

 

広中先生曰く;

まつたけはアカマツ林にできるキノコの一種だ。そんなことはだれでも知っているが・・。アカマツ林を探しても、ぷんぷん香りはしてもなかなか見つからない。

キノコは、実は菌類が胞子形成のために作る複合的な構造物である。多くの菌類ではその体は糸状になった細胞列である菌糸からなる、菌糸体という構造になっている。まつたけも例外ではない。胞子形成する菌糸が寄り集まって、胞子形成部分を覆う構造菌糸の壁を作り、それが並んだひだを下面に傘の構造となりキノコとなる。まつたけは典型的に、環状のコロニーを作って発生し、その領域を「シロ」と呼ぶ。シロの地下にはまつたけの本体である菌糸体と菌根が発達しており、土壌が白くなっている。

 

ところで、ちょっと湿って貧栄養、菌体にとって心地よい環境では、環状のコロニーを毎年広げ、何事もなかったように、地中で広がり続ける。まつたけなんぞ出来はしない。ところで、進行方向に、岩が有り、川があったりすると様相は一変する。これは大変と、地上にきのこが出現し

胞子を飛ばせて、必死に種の保存を計る。まつたけの出現だ。

 

教育も同じこと、子供達にとって平穏で、なに不自由なく勉強できる環境は申し分なく、最良だ。でも、それだけでは、花開くことはない。まつたけだけじゃなく、子供達にとっても、環境の激変は、成長のための大きな試練だ。

 

一人で海外旅行を冒険しても良いし、無人島小旅行も良いかもしれない。福島のこの度の試練は過酷過ぎたが、時に刺激も必要だ。

 

というような話だった。

2012-1-9 Yoshi